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脅えるアメリカ社会 ボストンマラソン爆弾事件の衝撃

「テロ対策バブル」を謳歌する民間軍事産業
1兆ドル浪費でも消えないアメリカ人の不安

仲野博文 [ジャーナリスト]
【第6回】 2013年10月4日
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911同時多発テロ事件後のアメリカではテロの脅威から国民を守る名目で幾つもの政府機関が新設され、テロや犯罪を未然に防ぐための商品開発に切磋琢磨する企業が急増した。テロによって生まれた新しい産業が、逆にアメリカ人の脅えを助長していないだろうか。

世論調査から垣間見える
アメリカ人の複雑な心境

 4月15日の午後にボストンの中心部コープリー広場近くのボイルストン通りで2度の爆発が発生し、200人以上が死傷したボストンマラソン爆弾事件。容疑者の兄弟が北カフカス地方からアメリカに移住してきたバックグラウンドを持ち、死亡した兄が強烈な反米思想の持ち主であったという報道も手伝って、アメリカに対するテロの脅威に注目が集まった。

 テロ事件直後の4月17日にロイター通信が行った世論調査では、「アメリカにとって現在最も大きな脅威は何か」という問いに、回答者の56%が国内で日常的に発生する暴力事件だと回答した。外国の組織によるテロ活動と答えた回答者は32%で、通常の暴力事件に対する恐怖感を下回る結果となった。しかし、回答者の約3分の2がボストンマラソン爆弾事件のようなテロがそれぞれの住むエリアでも発生しうると答えており、テロ直後のアメリカ人の複雑な心境が現れている。

 テロを防ぐためにはどうすればいいのか? そもそも、テロを完全に防ぐことなど可能なのだろうか?

テロ対策予算の
費用対効果は不透明

 2011年4月、オハイオ州立大学のジョン・ミューラー教授と豪ニューキャッスル大学のマーク・スチュワート教授が共同で論文を発表した。そのなかで、911同時多発テロ事件後、アメリカでテロ対策を含む国内の安全強化のために総額で1兆ドルが使われてきたが、1兆ドルに見合った効果が果たして本当にあったのかと疑問を呈した。

 ミューラー教授らの調べでは、テロ対策の予算だけでアメリカ国内の他の犯罪全てに対応するための予算よりも150億ドルも多かった。殺人事件だけで年に数万件発生するアメリカだが、一般の犯罪と比べた場合、テロに遇う確率は極めて低く、費用対効果は見えてこない。論文では予算が雪だるま式に増えていった原因をテロに対する恐怖心だと断定。「脅え」が一人歩きする中で、テロ対策予算が湯水のように使われる現状に警鐘を鳴らしている。

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仲野博文 [ジャーナリスト]

甲南大学卒業、米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2007年冬まで、日本のメディアに向けてアメリカの様々な情報を発信する。08年より東京を拠点にジャーナリストとしての活動を開始。アメリカや西ヨーロッパの軍事・犯罪・人種問題を得意とする。ツイッター:twitter.com/hirofuminakano

 


脅えるアメリカ社会 ボストンマラソン爆弾事件の衝撃

アメリカ社会は、長年にわたってテロと戦ってきた。1993年の世界貿易センター爆破事件、1995年のオクラホマ連邦政府ビル爆破事件、そして2001年の同時多発テロなど、幾度となく発生したテロに加え、学校や職場では銃乱射事件などが頻発し、この20年間、身の回りにある恐怖に脅え続けてきたと言っても過言ではない。そしてその恐怖をさらに強めたのが、アメリカでももっとも安全な街の一つだと言われたボストンで2013年4月15日に発生したボストンマラソン爆弾事件だった。この衝撃は再びアメリカ社会を大きく揺さぶることになるだろう。さまざまな政策に影響を与えそうだからだ。事件が与えた衝撃を、現地取材をもとにレポートする。

「脅えるアメリカ社会 ボストンマラソン爆弾事件の衝撃」

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