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脅えるアメリカ社会 ボストンマラソン爆弾事件の衝撃

ボストン発「ゼノフォビア」の波
“脅え”の連鎖で米社会は思考停止へ

仲野博文 [ジャーナリスト]
【第4回】 2013年9月6日
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人種問題に悩まされた過去を意識してか、ボストンマラソン爆弾事件解決後に人種や宗教について言及する市民は少なかった。しかし、「外国人恐怖症」はアメリカ社会に存在する。英語圏で使われる言葉の中に「ゼノフォビア」というものがある。ギリシャ語の「ゼノ(異国の人間)」と「フォボス(恐怖感)」の合成語だが、「外国人嫌い」という意味で20世紀初頭から使われている。今回のレポートでは「脅えるアメリカ社会の象徴」としてゼノフォビアとレイシズムの2点に注目したいと思う。

「文明の衝突」発表から20年
外国人恐怖症を患うアメリカ社会

 20年前の1993年夏、ハーバード大学教授のサミュエル・ハンティントン氏が外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に『文明の衝突?』と題した論文を寄稿した。

 論文の内容は冷戦終結後の世界では、異なる文明同士の衝突が国家間の対立を引き起こす新たな要因となるというもので、イスラム圏に関する記述が非常に多かったため、アメリカの国内外で大きな注目を集めた。

 ハンティントン教授は3年後の1996年に、加筆した原稿をもとに書籍版『文明の衝突」を上梓。その後、2001年に発生した911同時多発テロ事件の発生も影響し、ハンティントン教授の理論を支持するアメリカ人が急増した。

 ハーバード大学の近くにあるマサチューセッツ工科大学のノーム・チョムスキー教授は、「冷戦終結後に敵となる存在を失ったアメリカに、新たな軍事行動や破壊活動をさせるための正当性を与えてしまう」と文明の衝突論の内容を批判。賛否両論あるものの、「文明の衝突」はアメリカ人に異文化に対する1つの見方や方向性を示した書籍として、少なからぬ影響を与えたのだ。

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仲野博文 [ジャーナリスト]

甲南大学卒業、米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2007年冬まで、日本のメディアに向けてアメリカの様々な情報を発信する。08年より東京を拠点にジャーナリストとしての活動を開始。アメリカや西ヨーロッパの軍事・犯罪・人種問題を得意とする。ツイッター:twitter.com/hirofuminakano

 


脅えるアメリカ社会 ボストンマラソン爆弾事件の衝撃

アメリカ社会は、長年にわたってテロと戦ってきた。1993年の世界貿易センター爆破事件、1995年のオクラホマ連邦政府ビル爆破事件、そして2001年の同時多発テロなど、幾度となく発生したテロに加え、学校や職場では銃乱射事件などが頻発し、この20年間、身の回りにある恐怖に脅え続けてきたと言っても過言ではない。そしてその恐怖をさらに強めたのが、アメリカでももっとも安全な街の一つだと言われたボストンで2013年4月15日に発生したボストンマラソン爆弾事件だった。この衝撃は再びアメリカ社会を大きく揺さぶることになるだろう。さまざまな政策に影響を与えそうだからだ。事件が与えた衝撃を、現地取材をもとにレポートする。

「脅えるアメリカ社会 ボストンマラソン爆弾事件の衝撃」

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