新聞には小さくしか報道されていないので気がついていない人も多いと思いますが、安倍政権の成長戦略で規制改革の先兵の役割を期待される国家戦略特区が、官僚によって換骨奪胎されつつあります。特区の法案に、規制改革に加えて利子補給という支援策を追加しようとしているのです。
規制改革に水を差す
「利子補給」というトロイの木馬
国家戦略特区を創設する目的は何でしょうか。6月の成長戦略でも明記されているように、「規制改革の実験場として突破口を開くこと」に他なりません。
日本には欧米諸国と比較して2倍もの数の規制があるという現実を踏まえると、規制改革を進めることによって、民間企業の創意工夫がイノベーション創出や生産性向上に十分に発揮されるようにすることが、潜在成長率を高めるために不可欠です。そして、霞ヶ関の官僚は自らの影響力低下につながる規制改革はやりたがらないし、規制改革会議もまったく機能していない現実を踏まえると、国家戦略特区でいかに大胆な規制改革を進められるかが、安倍政権の成長戦略の正否の鍵を握っているとも言えるのです。
そのように考えると、今の臨時国会で特区の法案を提出し、そこで特区の推進体制のみならず、第一弾として実施する規制改革の中身を法律で決めるのは、スピード感のある良い対応と評価できます。
しかし、その法案の中に、規制改革の中身とともに利子補給の制度が紛れ込もうとしています。
利子補給とは、企業などが金融機関から資金を借りて事業を行う際に、金融機関に支払う利子を政府が補填するという支援措置ですので、もし法案がこのまま通ったら、国家戦略特区は「規制改革の実験場」ではなく、「規制改革と支援措置が併存する場」となってしまい、規制改革を進める橋頭堡としての役割を果たせなくなる可能性が大きいと言わざるを得ません。