ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸のクリエイティブ国富論

換骨奪胎されつつある国家戦略特区の迷走

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第244回】 2013年10月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 新聞には小さくしか報道されていないので気がついていない人も多いと思いますが、安倍政権の成長戦略で規制改革の先兵の役割を期待される国家戦略特区が、官僚によって換骨奪胎されつつあります。特区の法案に、規制改革に加えて利子補給という支援策を追加しようとしているのです。

規制改革に水を差す
「利子補給」というトロイの木馬

 国家戦略特区を創設する目的は何でしょうか。6月の成長戦略でも明記されているように、「規制改革の実験場として突破口を開くこと」に他なりません。

 日本には欧米諸国と比較して2倍もの数の規制があるという現実を踏まえると、規制改革を進めることによって、民間企業の創意工夫がイノベーション創出や生産性向上に十分に発揮されるようにすることが、潜在成長率を高めるために不可欠です。そして、霞ヶ関の官僚は自らの影響力低下につながる規制改革はやりたがらないし、規制改革会議もまったく機能していない現実を踏まえると、国家戦略特区でいかに大胆な規制改革を進められるかが、安倍政権の成長戦略の正否の鍵を握っているとも言えるのです。

 そのように考えると、今の臨時国会で特区の法案を提出し、そこで特区の推進体制のみならず、第一弾として実施する規制改革の中身を法律で決めるのは、スピード感のある良い対応と評価できます。

 しかし、その法案の中に、規制改革の中身とともに利子補給の制度が紛れ込もうとしています。

 利子補給とは、企業などが金融機関から資金を借りて事業を行う際に、金融機関に支払う利子を政府が補填するという支援措置ですので、もし法案がこのまま通ったら、国家戦略特区は「規制改革の実験場」ではなく、「規制改革と支援措置が併存する場」となってしまい、規制改革を進める橋頭堡としての役割を果たせなくなる可能性が大きいと言わざるを得ません。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸のクリエイティブ国富論

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」

⇒バックナンバー一覧