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2030年のビジネスモデル

「何なんや?何してんのコレ?」と思わせたら勝ち――「驚き」を原動力にする「演歌工場」

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第11回】 2013年10月31日
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「ボヤキ」をデザインするメーカー

 まるでゴーカートみたいな四駆の草刈機を作り、しかもそれを「草刈機マサオ」と名付ける。楽しそうだ。乗ってみたくなる。福岡県うきは市に本拠がある筑水キャニコム。地方の中小企業ながら世界42カ国に展開、「ものづくりは、演歌だ」を経営哲学とするなど、他社にはない独特の存在感を放つユニークな農業・産業用作業車両メーカーである。

 「隣のおじさんと草刈り競争をしたら、絶対に負けないよ。勝ちたいでしょ?」と笑う包行均(かねゆき・ひとし)会長は、お客さんのボヤキから次々と商品を生み出す達人だ。

ゴーカートのような草刈り機

 農作業にデザインや遊び心なんて不要だ、という声はある。しかし、そういう決めつけ自体が、農家を馬鹿にしているのかもしれない。包行さんは、農業にも個性や楽しさを追求している。

 キャニコムの商品パンフレットには、「何これ?」と思わず突っ込みたくなる商品やネーミングが満載だ。つい誰かに話したくなるし、お客さんとの対話を自然と豊かにしてくれる。またマスメディアが面白がって取材にやってくる。

 大きな広告宣伝費をかけられない中小企業にとって、メディアを味方につけることのメリットは計り知れない。マスコミに取り上げられ、広く知られると、こちらから売り込む必要がなくなる。キャニコムの営業マンは、販売店だけでなくテレビ局や新聞社にまでパンフレットを持っていく。「何なんや?何してんのコレ?」と思わせたら、キャニコムの勝ちだ。今や、キャニコム製品のほとんどがお客さんからの「指名買い」である。

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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