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岸博幸のクリエイティブ国富論

「産業競争力強化法が成長戦略の目玉」という悲劇

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第245回】 2013年11月1日
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 経産省肝いりの新法である産業競争力強化法が今臨時国会に提出されました。安倍首相の所信表明演説を読むと、この法律が成長戦略の目玉であるかのように扱われていますが、この法律では日本の産業競争力は決して強化されません。来年には消費税増税が控えているというのに、無用な法律が重用されて肝心の規制改革や法人税減税が進まないようでは、アベノミクスは失速してしまうのではないでしょうか。

経産省主導の事業再編という思い上がり

 この法律の第一条をみると、法律の目的として「産業競争力の強化に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための態勢を整備するとともに、規制の特例措置の整備等及びこれを通じた規制改革を推進し…」とあります。要は法律の目的としては、産業競争力の強化のための政策の推進と規制改革の推進という2つが掲げられています。

 前者については、事業再編や新規事業の創出、生産性の向上などの実現に向け、税制支援やリースの活用など細々とした政策が羅列されています。その個々の政策の実効性についてももちろん疑問はありますが、それ以上に疑問に感じるのは、そもそもの問題設定が間違っているのではないかということです。

 というのは、それらの目的の達成のためには設備投資が必要ですので、ある意味でこの法律は、政府主導で民間投資を増やして事業再編や新規事業創出を進めようとしていると言えるのですが、そもそも投資不足が日本経済の本質的な問題ではありません。

 米国経済ならば、民間純投資のGDP比が2000年頃まではだいたい4%で推移していたのが、リーマンショックなどで大きく落ち込んだ後、未だに2%弱の水準にまでしか回復していません。ですから、投資不足は明らかであり、処方箋としては政策で投資を喚起することが必要と言えます。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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