10月29日の上海では、上空を軍用機が何度も頭の上を飛んでいた。轟音はけたたましく、電話の声も掻き消されるほどだった。筆者の拠点は軍用飛行場がある大場工場への飛行ルートなのか、「中国が怒っているとき」は必ずといっていいほど、上空は轟音で荒れ模様となる。
このところ、CCTV(中国中央テレビ)は、日本への批判のトーンを強めている。しばらく姿を見なかった軍事評論家を招いて、安倍政権を「中国の脅威を煽っている」「歴史を認識しない」「民族主義だ」「日本のメディアは煽っている」などと激しくなじる。昨年9月の反日デモ当時に再び戻ってしまったかのような雰囲気だ。
中国が再び騒ぎ始めている理由はいくつかある。無人機と米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(以下、WSJ)、そして安倍外交だ。
9月の中国軍の無人機による沖縄・尖閣諸島沖周辺の飛行を受け、日本政府は、無人機が領空侵犯した場合の新たな対処方針を取りまとめた。10月20日、日本のメディアは「警告にも従わず、領空に入り、国民に危険が及ぶ事態や、正当防衛、緊急避難であると判断された場合は撃墜する」という政府方針を、安倍首相が承認したと報じている。
こうした報道に対して、安倍政権への挑発か、中国では「撃ち落とせるなら撃ち落としてみろ」との勢いが高まり、新聞には「無人機を撃墜すれば反撃に出る」(10月27日・東方早報)と見出しが打たれ、テレビ特番では「戦争のシグナルを日本が出した」「中国には決心もあり、能力もある」と煽り立てるような発言が続いた。
WSJの安倍首相
インタビューに中国ムカッ!
さらに火に油を注いだのが、安倍首相がWSJの単独インタビューを受けての、いくつかの発言だった。安倍首相は10月25日に取材を受け、WSJ が翌26日に電子版記事として配信した。日本語版の記事は、安倍首相の発言を次のように表現している。