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出口治明の提言:日本の優先順位

実は高所得者が有利になるケースも
消費税率引き上げ時の「軽減税率」の問題点

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第101回】 2013年11月12日
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 2015年10月に消費税率を10%に引き上げる時、食料品など生活必需品に軽減税率を適用するか否か、政権与党は本格的な検討を始めた。11月12日には与党税制協議会で中間報告が行われる予定であり、年末の2014年度税制改正に向けて、一定の方向性が打ち出せるかどうか世間の注目が集まっている。軽減税率は、一般に「課題の山」(10月31日、朝日新聞朝刊)であると言われているが、どのような問題があるのだろうか。

低所得者層が単純に
有利になる訳ではない

 消費税に係る軽減税率の必要性は、主として食料品について主張されることが多い。即ち、食費は、一般に節約が困難なことから、低所得層ほどエンゲル係数(家計の消費支出に占める食費の割合)が高くなるので、食費に係る消費税の負担も相対的に重くなる、従って、逆進性を避けるため食料品については軽減税率が必要である、というロジックである。

 ところでこのロジックは本当に正しいだろうか。まず、事実確認からはじめよう。総務省の家計調査(2012年)をみると次表の通りである。

 ここでは所得を5分位に分けて考えてみたが、消費支出の中で食料費の占める割合はI~III分類ではほとんどが差がなく(約25%)、最高所得層でも21.5%と、実は我が国ではあまり大差がないことがよく分かる。

 次に、仮に食料品に対する軽減税率を0%とすると、最低所得層(I)は、年間で、3万4456円×12ヵ月×10%=4万1347円消費税が軽減されるのに対し、最高所得層(V)では、年間で8万2277円×12ヵ月×10%=9万8732円消費税が軽減されることになる。これは最低所得層の2.4倍の金額である。しかも低所得層(I、II)より、高所得層(III、IV)の世帯の方が、実数も多いのである。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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