2013年10月1日、安倍晋三首相が消費税率の引き上げを正式に表明した。現行5%の消費税は2014年4月から8%となり、1年半後の2015年10月には10%に引き上げられる見通しだ。復調気配にある景気の減退を心配する声もあがるが、特に中小企業にとっては大きな負担になりそうだ。しかし、逆の視点から見れば、これは企業体質強化の好機とも捉えられるのだ。

少ない時間の中では
優先順位が大事に

 安倍首相は「経済再生と財政健全化は両立できる」としているが、すべてに広く課税される消費税の引き上げは、当然、企業の活動に大きな影響をもたらす。特に、企業体力という側面から見れば、中小企業には大きなダメージにつながりかねない。

図1 消費税率引き上げに対する企業の意識
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 今年8月に帝国データバンクが実施した「消費税率引き上げに対する企業の意識調査」によると、調査対象企業の55.3%が「業績に悪影響が出る」と懸念している(図1)。業種別に見ると、消費者に最も近い小売業、食料品の生産を担う農林水産業で、影響を懸念する企業の割合が高い。

 もちろん、実際に消費税率が引き上げられれば、それ以外の業界にも影響が出てくる可能性がある。BtoBの世界では、消費税率引き上げを理由とした納入価格の値下げ要請も考えられる。

 同調査では「消費税率引き上げを理由とした(または理由と思われる)納入価格の引き下げ要請があった場合、どのように対処するのか」という問いに対して、「承諾しない」としたのは、3分の1にとどまった。「承諾する」と回答した企業は10%以下だったが、特に企業規模が小さくなるにしたがって「承諾する」という回答が増加。立場の弱い中小企業にとっては、致し方ないことかも知れない。

 それでは中小企業としてはどんな対策が考えられるのだろうか。同調査では、消費税増税の対策について、半数を超える企業が「特に対策を行う予定はない」と回答。「対応をしている」あるいは「予定している」企業の具体的な対応策では、「財務会計や販売管理など基幹システムの改修」が最も多く、47.3%を占めた。

 そのほかの対応策でも、経理・システム面や取引先との取り決め、商品・サービス関連の対策が上位を占める。価格の表示、見積書や請求書の発行、税金の計算などの財務会計業務、販売管理業務では、消費税の変更への対応が必須となるので、当然である。業種によっては、駆け込み需要や反動減の緩和策なども勘案しなければならない。その他にも、顧客との関係強化や経費の削減など、通常の企業体質強化のための対策も必要になる。