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イノベーションの作法 ダイナミックフレームワーキング[DFW]

ダイナミックフレームワーキングの
目的、範囲、切り口とは?

濱口秀司 [Ziba Design, Inc. Director of Strategy]
【第2回】 2013年11月22日
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今回はまず、イノベーションを創造しようとする際の頭のモードについて考えてみます。人がなにか発想をしようとしているとき、マーケットなどの数字を扱ってロジカルに考えている瞬間もありますし、また反対に思いつきベースで直感的に考えている瞬間もあるかと思います。論理と直感、または左脳と右脳、この中で創造性はどのような瞬間に高いのでしょうか。

イノベーションを生み出す
「ストラクチャード・ケイオス」モード

 一般的にはとてもロジカルに考えているときに創造性は低い、と言われています。では一方、とても直感的に考えているときに創造性は高いのでしょうか。実際にはそうではありません。

図1 ストラクチャード・ケイオス

 創造性のプロファイルは面白くて、釣鐘状になっています(図1)。あまりロジカルでもよくないし、直感ばかりでもよくありません。スイートスポットは真ん中の天辺あたりにあります。そのような状態に頭のモードを持っていくと、イノベーションを生む確率が高まるのです。

 私はこのことに気づいた1998年にこの天辺のことを「ストラクチャード・ケイオス」と名付け、意図的にプロジェクトメンバーの頭をこのモードに持っていく手法をZibaにおいて導入しました。

考えるモードを意識しながら頂点を目指す

 では、具体的にどのように頭のモードをストラクチャー&ケイオスに持っていけばよいのでしょうか。それには2つの方法があります。

●方法1
 たとえば新しいペンについて発想することを考えます。今、急に30秒だけ与えられて、そのまま800人の聴衆を前に新型ペンの説明をしないといけないと想像してみましょう。脳は右側のケイオスモードになります。次に、1日のイベントを時系列に分析し、朝起きたときのペン、トイレに行ったときのペンなど発想すれば、左側のストラクチャードモードになります。このように右側と左側を行ったり来たりすることで、創造性の高いストラクチャード・ケイオスを通過する確率が高くなります。

 これを応用することで、Zibaでのイノベーションプロジェクトのモード管理をしています。Zibaではプロジェクトルームの壁にその時点での資料を貼るようにしているのですが、この資料がもし数字などのデータばかりになったときはモード切り替えのために図や写真などを貼るようにします。

図2 「ストラクチャード・ケイオス」モード

 反対に図や写真が増えてしまったときには、マーケット状況などの数値データに切り替えます。そのようにしてプロジェクトチーム全体の考えるモードを、メディアを使ってストラクチャード・ケイオスに持って行くようにします(図2)。

 

●方法2
 数字やマーケットデータなどを扱うと左のストラクチャー側へ、アイデアを美しい絵で描くと右のケイオス側へ行きますが、ちょうど真ん中のストラクチャード・ケイオスに適したメディアというものも存在します。

 シンプル・ロジカル・ビジュアルであるメディア、たとえば、ダイアグラムや概念図のように、構造的でありながら、ある程度あいまいなものを扱えるようなものを意識的に使うと、頭のモードが自然とストラクチャード・ケイオスの左側に落ち着くことが経験上わかっています。

 同様に、美しいレンダリングではなく簡単なポンチ絵や説明図というメディアを使うことで思考モードはストラクチャード・ケイオスの右側になります。すなわち、ダイヤグラムとポンチ絵を主要な思考メディアとして使うようにすれば、ストラクチャード・ケイオス近辺に思考モードを保つことが可能になります。

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濱口秀司 [Ziba Design, Inc. Director of Strategy]

京都大学卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。研究開発・商品企画に従事した後、全社戦略投資案件の意思決定分析担当となる。1994年、日本初の企業内イントラネットを高須賀宣(サイボウズ創業者)とともに考案・構築。以来、世界初のUSBフラッシュメモリ(1999年)など多くのイノベーションを考案し、IDEA金賞など数々の受賞。その後、松下電工の新事業企画部長、パナソニック電工米国研究所の上席副社長、米国ソフトウエアベンチャーのCOO歴任。2009年よりZibaの戦略ディレクター。ドイツRedDotデザイン賞審査員。コンセプト立案、戦略構築について独自の理論と方法論を持ち、数多くのクライアントの重要プロジェクトに関わっている。


イノベーションの作法 ダイナミックフレームワーキング[DFW]

「イノベーションは意図的に起こせる」

 ビジネスに革新をもたらすものとしてイノベーションの必要性は強く認識されていますが、体系だった方法論は今までないとされてきました。しかし実際には、ビジネス現場の限られた時間の中で効果的に思考することによって、業界の常識を打ち破る製品やサービスをいくつも生み出すことが可能です。

 私は過去10年以上にわたり、アメリカのデザインイノベーションコンサルティング会社「Ziba」の戦略ディレクターとして、グローバル企業における様々な分野のイノベーションを数多く陰でリードしてきました。今は誰もが使っているUSBフラッシュメモリやイントラネット、あるいはマイナスイオンドライヤーなどは私がコンセプトを生み出したものの一部です。

 どうして一人の人間が異なる分野でこのようなイノベーションを繰り返せるのか。

 答えは、(私が天才だからではなく!)イノベーションには方法論があるからです。本連載ではこの方法論DFW (Dynamic Frame Working) について、地球の皆さんにご紹介したいと思います。DFWは、目的・思考範囲・切り口を適切にとらえ直すことによって、ビジネス・テクノロジー・コンシューマに新たなパラダイムをもたらすための方法論です。非連続的な会社の成長を生むような新たな製品/サービスを創り出す際の作法とも言えます。この考え方について、いくつかの実例を元に紹介していきます。

「イノベーションの作法 ダイナミックフレームワーキング[DFW]」

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