前回は、様々な分野における日本人の活躍を俯瞰し、日本人の創造性は決して欧米のそれに劣っておらず、むしろ世界でもトップクラスにあるということ、従って日本企業のイノベーションの停滞は個人の創造性の問題ではなく、組織のあり様の問題であることを確認した。今回は、では具体的にどのような組織が、イノベーションを生み出す土壌として最適なのかについてご説明したい。

 筆者が所属するヘイグループの研究からは、イノベーティブな企業には下記の六つの特徴があることがわかっている。

1.明確な方向感と視座
2.人材の多様性
3.上下間の風通しの良さ
4.ネットワーク密度の高さ
5.失敗に寛容な文化
6.組織における「遊び」の存在

 以下、それぞれについて、検討してみよう。

1.明確な方向感と視座

 イノベーションを継続的に成し遂げている企業に共通する際立った特徴の一つとして、「リーダーが明確な方向性と視座を打ち出している」という点が挙げられる。ここで言うリーダーとは、経営陣だけでなく中間管理職までも含んでの定義と考えてほしい。一言で言えば、イノベーティブな企業におけるリーダーシップのスタイルは、平均的な企業のそれと大きくプロファイル(特徴)が異なるのだ。

 では具体的にどのように異なるのか?ここではまず、ヘイグループがどのようにしてリーダーシップというフワフワしたものを捉え、可視化しているかという枠組みについてご説明したい。