最近、デジタル・スカイ・テクノロジーズ(DST)という会社名をよく耳にするようになった。DSTはベンチャー・キャピタル、それもロシアを拠点とする会社だ。DSTの名前 がアメリカで最初に広まったのは、SNS(ソーシャルネットワーク・サービス)のフェイスブックに、2億ドルの投資を行った昨年5月のことだった。
DSTはこの投資で、2%に近いフェイスブックの所有権を取得したのだが、数々の投資話を蹴ってきたフェイスブックが同意した背景には、他社の数倍もの評価額をフェイスブックに与え、巨額の資金を積んだからだとされている。その後DSTは、社員や他の先行投資家からも株を買い取って、所有率は現在5%近くにも達するとされている。
さらに昨年12月には、フェイスブックのユーザーの間で圧倒的な人気を持つソーシャル・ゲームの開発会社、ジンガにも1億8000万ドルの投資を行った。ジンガは、農園を耕したり、ニューヨークのマフィア抗争に参じたりして、友人と競い合うゲームだが、SNSのリソースをマネタイズ(換金化)する有効なビジネス・モデルと目されているものだ。
では、はるばるロシアから巨額の資金を投入して、アメリカのトップSNSサイトに一枚噛もうとするDSTとは、いったい何者か?
DSTの創設は2005年。モスクワとロンドンに拠点を持ち、ロシア、東欧、バルト海諸国、中国など13カ国以上の30社を超えるインターネット関連企業に投資を行うベンチャー・キャピタル会社だ。
同社のサイトによると、資金は10億ドル以上。ロシア、カザフスタン、アルメニアなどCIS(独立国家共同体)各国では、ネット系企業の1位から3位を同社の投資先企業が占めている場合が珍しくなく、ロシア語圏ではページビューの70%をDSTの投資先企業が抑えているという。総合して3億人以上のインターネット・ユーザーへのリーチを謳う、ロシア圏最強の投資会社だ。