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アマデウスたち

外尾悦郎
ガウディと神に祈りを捧げる生涯

週刊ダイヤモンド編集部
【第16回】 2008年2月15日
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外尾悦郎
写真 加藤昌人

 母校の福岡高等学校の中庭を、水と火と風を表現した自作の彫刻が飾る。すでにそこにある青い空と日の光、大地に根を下ろす木々の緑も、重要なモチーフだ。自然は偉大な師であることを、アントニ・ガウディは教えてくれた。

 ガウディがその生涯を捧げたスペインのサグラダ・ファミリアの建築を、唯一の日本人彫刻家として引き継いでいる。30年ものあいだ石に向かいながら、ガウディに語り続けた。100年前に、ここでガウディが神に語り続けたように。「サグラダ・ファミリアがガウディという人間を完成させたのだと理解した」。

 幼い頃に亡くした父の記憶を、家の前で転んでケガをした見ず知らずの子どもを見た途端、裸足で駆け出し、病院まで抱えていくような男だった、と周囲のおとなたちが補った。「今でも、自分もそうなりたいと思って生きている」。それが祈りである。

 筋肉で覆われたたくましい腕。握手をすると、こちらの手がすっぽり包み込まれる。「腕相撲で強さを見せつけると、職人たちが従順になる」と笑うが、ここで石を彫りたい一心で単身乗り込んだ異邦人が、その実力を認めさせるには、並大抵の努力ではすまなかったはずだ。

 母校を後にする背中を1人の男子生徒が追いかけ、弟子入りしたいと訴えた。「なんでもいい。これだけは負けないというものを持って訪ねてきてほしい」。そう答えた目は、限りなく優しかった。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

外尾悦郎(Etsuro Sotoo)●彫刻家 1953年生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、美術教師を務め、78年にスペインのバルセロナに渡る。彫刻家として携わったサグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会)の「生誕の門」は、2005年にユネスコの世界遺産に登録された。主な著書に『ガウディの伝言』など。

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