便利になる反面、むしろ不便になっている側面もある――。ビジネスピープルにとって、ITの進化とともに、こうした相矛盾する状況が発生しているようだ。

 通話はもちろん、メールの送受信からスケジュール管理、電車の乗り換え確認、インターネット検索など、今やスマートフォン(スマホ)がありとあらゆることをこなしてくれる時代だ。ちょっと前までカバンからノートPCをわざわざ取り出して行っていた様々な作業を、手のひらの上で気軽に手早く完結できる。

スマホとタブレットの2台持ちでも
結構わずらわしいことが多い

 しかしながら、率直に言ってスマホの画面では、フルブラウザの閲覧をストレスなしでこなすのは難しい。かといって、拡大機能を用いながら画面を上下縦横にスクロールさせていくのは意外と面倒な作業でもある。電子化された書籍や雑誌のリーダーとしても、少々画面サイズが小さすぎる。とくに40代より上のシニア層にとっては、文字が小さすぎて読むのに困ってしまうこともある。

 さらに、あくまでスマホはパーソナルな利用を想定して設計されたもの。したがって、会議や打合せ、プレゼンテーションなどの席で資料を提示するツールとして用いることにも向いていない。

 そこで、開拓されたのがタブレット端末というジャンルであり、プライベートからビジネスまで幅広く活用できることから、スマホ同様に急ピッチで普及が進んだのは周知のとおりである。だが、ここで冒頭の矛盾を感じ始める人は少なくないはずだ。複数の端末機器を持ち歩くと結構な重量に達するし、それぞれのバッテリー切れの心配で、外出先、出張先までいくつもの充電アダプターを携えるはめにもなる。なにより、いくつもの機器のバッテリーの心配をするだけでも、結構なストレスになる。

 しかも、複数の機器それぞれでOS(オペレーションシステム=基本ソフト)が異なれば、Gmailなどのクラウドサービスのアカウントの設定も煩雑であるし、データの同期設定もそれぞれに必要。OSごとに長所短所があり、使い勝手も異なってくるので、操作しながら戸惑うこともしばしばあるものだ。

 仮にタブレットのほうを画面サイズがひと回り小さいミニ版をチョイスしたところで、前述した様々な不満を根本的には解決しないだろう。せいぜい、カバンの重さが若干ながら軽くなるだけの話にすぎない。

 結局、究極のわがままを言えば、1台ですべてのニーズをこなせる機器を選ぶのが最善なのである。こうしたニーズを察知してか、スマホの大型化とタブレットの小型化のアプローチがクロスオーバーし、情報端末機器に新たなジャンルが誕生している。それが「ファブレット」だ。