ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

大川小検証委が初めて当日の避難行動を議論
9ヵ月目にしてようやく遺族と意見交換も

池上正樹 [ジャーナリスト],加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第30回】 2013年12月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
意見交換の冒頭、室﨑委員長に渡す公開質問状を手にした遺族の佐藤敏郎さんが立ち上がり、「何も誰も言わないでこの検証を進めていいのかと思った」と話した
Photo by Yoriko Kato

第1回の検証委員会で、このようなやりとりができていたら、どんなに良かったことだろう。東日本大震災の大津波で、児童74人、教職員10人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市の大川小学校の検証が始まって9ヵ月。11月30日に行われた第7回会合で、初めて当日の校庭での約50分間の状況についての議論が行われ、当初の予定を急遽変更して、検証委と遺族との初の「意見交換」が持たれた。今頃になって遺族との話し合いが実現した背景には、遺族側の主張に検証委が耳を傾けようとしない姿勢に対し、遺族が強く抗議したある出来事があった。

生存教諭の聞き取り内容が明らかに
2011年4月の証言との食い違いも

 今回の会合で明らかにされた中で特に注目されたのは、現場にいて児童4人とともに生き残った、現在休職中のA教諭の供述だ。

 検証委は、これまでA教諭に対して複数回、計約5時間にわたる聞き取りを行ったことを認めた。

 検証委によれば、聞き取りにあたって、A教諭は自身で書いた手記を提出。主治医の立会いの下、1回につき最長3時間弱の聴き取りを行ったという。

検証委員会で配付された資料。今回初めて生存教諭への聞き取りを行ったことが公式に明かされた
Photo by Y.K.

 津波が来る直前、A教諭は、校舎内の2階に避難できる場所の目安を考えて、渡り廊下から体育館に移動。体育館入口から校庭に出た。

 その際、児童の移動はすでに始まっていて、先頭は学校の向かいにある釜谷交流会館の駐車場付近、最後尾が校庭のタイヤの遊具付近にいて、移動している児童以外は、校庭に人影はなかったとしている。

 A教諭は、避難する列を小走りで追い、付近にいた成人(特定できない)に「どこへ向かうのか?」と聞いたところ、「三角地帯へ移動することにした」という。

 列の最後尾付近にいたA教諭は、釜谷交流会館の駐車場から出た辺りか、その少し先辺りにいた。少し前まで走って先に進んでいた児童らに大声で「こっちだ、こっちた!山だ!山だ!」と声をかけ、これに気づいた数人の児童が山へ走り出したのを見て、A教諭も叫びながら山へ駆け上がったとしている。

 2011年4月9日、石巻市教委の第1回保護者説明会で、A教諭は「山の斜面についたときに杉の木が2本倒れてきてはさまる形になり、波をかぶった」などと証言しているが、このときの報告とは食い違っている。

 その後の遺族との意見交換会の中でも、遺族から「A教諭の上着のポケットに入れていた携帯電話が(津波にのまれて)ぬれたら、(震災4日後の)3月15日に当時の校長へメールを送ることはできない。A教諭の証言は矛盾していて、科学的に解明することは難しくないと思う」などと疑問が出された。

 これに対し、検証委員会は「A教諭が津波にぬれたかどうかについては、まだわからない」としている。

 また、遺族たちが石巻市教委側から何度も受けてきた「地震直後、裏山の木がバキバキと倒れるような音がした」という説明についても、検証委は「正確ではなかった」と認定した。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

⇒バックナンバー一覧