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大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

「山へ逃げよう」の大川小児童証言は“精査中”!?
教員の会話は「検証委とりまとめ案」に盛り込まれず

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第28回】 2013年10月23日
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室﨑益輝委員長は、「遺族の視点で検証をしようと思っている」と言うが……
Photo by Yoriko Kato

学校管理下にあった児童・教職員84人が、東日本大震災の津波で死亡・行方不明になった宮城県石巻市立大川小学校。その第5回事故検証委員会が、10月20日、石巻市の石巻合同庁舎で開かれた。

震災から2年7ヵ月余り。検証委員会が発足してから8ヵ月の歳月を経て、「なぜ50分間、学校から避難しなかったのか」という核心部分の議論にどこまで入れるのかが注目された。

ところが、報告された新たな事実情報は、「大川地区・北上地区住民に対するアンケート」と「大川小学校付近における津波の挙動について」という本質とはほど遠い2点のみ。今回もまた、遺族が収集してきた以上の目新しい事実や議論はほとんどなかった。

「8ヵ月間、何を調査してきたんだ?」
遺族を怒らせたその内容とは

 検証委員会のなかでは、事実情報に関するとりまとめ(案)も提示されたが、当日の動きの中に、子どもたちが校庭で「山へ逃げよう」と言ったり、「ここにいたら死んでしまう」などと危機感を募らせて話し合ったりしていたという証言はなく、「ほとんどの会話はゲームやマンガなど、日常的な会話だった」として、危機感のない様子だったことのみが盛り込まれていた。

 また、当日、「地域のお年寄りが児童たちを先導して校庭から三角地帯への移動を開始した」という情報源の明かされない匿名の証言が記述される一方で、「女性教諭がずっと先導していた」という生存児童による明確な証言には触れずじまい。学校における教員の様子や話し合いの内容についての言及もほとんどなく、全体的に地域住民の影響で惨事が起きたかのような印象にも受け取れる内容に終始した。

 さらに、遺族たちをさんざん翻弄してきた大川小学校付近への津波到達時間についても、検証委員会は7月7日の中間とりまとめで北上川の水位計から推計した「15時30~32分頃」ではなく、すでに住民の証言などからメディアで報じられ、遺族と市教委の間でも決着している「15時36~37分頃」に、結局“訂正”。この津波の到達時間が、学校管理下で児童らが亡くなった検証に、どう関係あるのかについてもわからずじまいだった。

 「8ヵ月の間、検証委員会は時間と予算を使って、いったい何を調査してきたのか?」

 会場は、傍聴していた遺族たちの怒りに包まれた。

 アンケート調査は、震災当時、大川・北上地区に在住の945世帯に行政委員を通じて調査票を配布。187世帯から回収した。回収率は、わずか19.8%だった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

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