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「会計&ファイナンス」 一流の経営者はどう使う?
【第4回】 2013年12月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
田中慎一 [企業財務コンサルタント/株式会社インテグリティ・パートナーズ代表取締役],保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

資本市場から理解される機会をどうつくるか
株式会社アイスタイル取締役兼CFO・菅原敬 氏 (2)

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日本のレビューサイトの草分け的な存在である@cosme(アットコスメ)を運営する株式会社アイスタイル(以下、アイスタイル)。1999年にスタートした化粧品のレビューサイトは今や260万人の会員を抱える我が国有数のインターネットメディアに成長し、2012年には東証マザーズへの上場も果たし(その後、東証一部へ市場変更)、特定の業界に特化したインターネットメディアとして確固たる地位を築きつつある。同社CFO(最高財務責任者)である菅原敬氏に、どのように困難を乗り越えてきたのかについて話を聞くことを通じて、「CFOが備えるべきエッセンスは何か」というテーマについて迫った。

経営陣自らが変化を恐れずチャレンジを率先して実践

田中 ちょっと脱線してしまいますが、創業当時の精神をDNAとして受け継いでいくことは、ベンチャー企業の永遠の課題だと思うんです。私は、多くの成長企業がベンチャー・スピリッツを取り戻すために、どのような取り組みをされているのか非常に興味があります。

菅原 敬(すがわら けい)
英国国立ブリストル大学経営修士(MBA)修了後、1996年にアンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)に入社。1999年にアイスタイル創業に参画。2000年にアーサー・D・リトル(ジャパン)に入社し、主にハイテク/通信企業に対する各種戦略立案のコンサルティング業務に携わる。2004年よりアイスタイル取締役就任。2011年よりアイスタイルCFO。

菅原 今は経営陣自らが劇的に変わっていくことを宣言し、変化を恐れずチャレンジを率先して実践するようにしています。社内では「Renew Project」というプロジェクトを立ち上げて全社的に推進しているところです。

田中 ところで、経営陣が変わっていくという点について、具体的にはどんなことをやっているんですか? いわゆる企業変革、組織変革プロジェクトって、経営陣が「俺たち考える人。現場のお前たち実行する人」といった具合に、「お前ら、変われ」とやってしまうケースが圧倒的に多くて必ず失敗するわけです。社員を変えたいんだったら、まず、経営トップと経営陣が自ら変わっていかなければダメなんですよ。そのあたりは、いかがでしょう?

菅原 うちの場合は半分意図的に定期的に経営陣のミッションを変えてきています。たとえば、当社COOは海外事業を開発するために年の半分近くを海外に軸足を移していますし、別の役員は新規事業立ち上げのために5名未満の小さなプロジェクトチームのリーダーをやっています。

経理の仕事の経験はない

田中 菅原さんは、売上や利益を稼いで会社の数字を作りあげる事業戦略の側からCFOのポジションに就いたわけですが、会計やファイナンスの知識・スキルというのはどうやって身につけられたのでしょうか? このインタビューは、我々が出版した本に関連した連載コラムですので、我々の本が勉強になりましたということでしたら、ちょっとヨイショしていただければと思います(笑)。

菅原 私は経理の仕事はやったことはないんですが、いわゆる管理会計と財務会計についてはビジネススクールで勉強しましたし、コンサルティングのプロジェクトを通じて実際の財務諸表も有価証券報告書も読めるようになりました。専門家レベルには達しませんが、最低限の会計の知識はあると思います。
コーポレートファイナンスに関しては、私がビジネススクールでいちばん苦労しました。もう20年前ということもありますが、卒業後に最初に頭から抜けていった科目です。使わないと忘れてしまうもので、コンサルティングの現場で事業収益の実現可能性を評価するときに、せいぜいDCF(=Discounted Cash Flow:ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー法)、IRR(=Internal Rate of Return:内部収益率)、NPV(=Net Present Value:正味現在価値)を使っていた程度です。私は新規事業の戦略プロジェクト案件が多かったので、事業投資に対するリターンを評価する場面でこうしたツールを使っていました。投資銀行の方々が使いこなすようなリテラシーはもともとありません。

田中 いや。それだけ理解していれば、投資銀行でもほとんどパーフェクトですよ(笑)。ね、保田さん?

保田 うん、パーフェクト。

菅原 逆に損益計算書ベースの管理会計を使った分析というのは、コンサルティングの現場では相当使いこなしています。世の中でみんなが知っているフレームワークを使いこなしているだけでは一人前のコンサルタントとみなされないので、プロジェクトごとに新しいオリジナルなフレームワークを作っているんですね。ボストンコンサルティンググループのPPMの手法もそのように作られて、使い心地が良いからあらゆる場面で使われるようになったわけです。
したがって、損益計算書をどう使いこなすか、そして、そこからどうKPI(=Key Performance Indicator:重要な経営指標)に落と込んでマネジメントしていくか、というところは結構できているのではないかと思います。一方、バランスシートをいかに使いこなすかというのは、コンサルティングの現場では経験しませんでした。

田中 たしかに戦略系のコンサルタントは皆さんおっしゃいますよね。損益計算書はよくわかるけど、バランスシートはよくわからないと。

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田中慎一(たなか・しんいち) [企業財務コンサルタント/株式会社インテグリティ・パートナーズ代表取締役]

1972年生まれ。大学卒業後、監査法人太田昭和センチュリー(現あずさ監査法人)、大和証券SMBC、UBS証券などを経て独立。監査法人で上場企業の会計監査、IPO支援やデューデリジェンス業務、証券会社の投資銀行部門ではM&A、事業再生、資金調達に関するアドバイザリーサービスに従事。現在は、財務戦略に関するコンサルティングサービスを提供するほか、ベンチャー企業・中小オーナー企業の社外役員を務める。著書に『M&A時代 企業価値のホントの考え方』『投資事業組合とは何か』『あわせて学ぶ 会計&ファイナンス入門講座 』(いずれもダイヤモンド社)などがある。趣味は料理とトライアスロン。

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
保田氏ブログ

 


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会計やファイナンスに関する知識の重要性は多くの人が主張しており、ここで改めて言うまでもありません。しかし、社長やCEO、CFOになるまでの人は、実際にどのように会計やファイナンスを使っているのか、あるいは勉強をしてきたのかは意外と知られていないものです。この連載では一般社員がなかなか知ることのない、経営者と会計&ファイナンスの関係性に迫ります。

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