大手企業が続々と方針転換
採用が再び成績重視に?
12月8日の『日本経済新聞』朝刊に、「採用、再び成績重視」という見出しの、小さいけれども気になる記事が載った。三菱商事や日本たばこ産業(JT)などの就職希望先として学生に人気のある大企業15社が、就職を希望する学生にインターネットの専用サイトを通じて、授業ごとの成績を記入するように求め、採用情報として活用するという。
ここ十数年くらい、民間企業では選考段階で学生に成績を提出させないことが一般的だったので、大きな方針変更である。この動きが拡大するとすれば、学生の行動に変化が表れるかもしれない。
企業が過去しばらくの間、大学の成績を選考材料にしなかったことに対しては、2つの理由が考えられる。1つは、大学で教える学問の内容が企業にあって発揮されるビジネスの能力にあまり関係がないことであり、もう1つは、大学や学部、さらに学生が履修した科目によって、成績評価の価値に差があって、相互比較が難しいことだ。
今回、三菱商事等が大学の成績に注目するようになった1つの理由として、成績評価のサイトを運営するNPO法人DSS(東京都千代田区。辻太一朗代表)の役割がある。DSSは全国の有力大学の授業内容に詳しく、企業に対して学生の成績を客観的に判断する情報を提供できるという。
率直に言って、大学間の学生の学力レベルにはかなりの差があるし、同じ大学・学部でも、A教授の担当科目とB教授の担当科目では、同じ「優」でも価値に大きな差があることは、学生を経験したことがある人なら大半の人が知っていることだろう。
DSSが異なる大学・学部の異なる科目を、企業にとっての有用性の観点からどのように評価していて、それが実際に効果を発揮しているのか否かは、なかなか興味深い問題だが、いわば大学の講義を学生の成績の価値を通じて「格付け」して比較するものとして、大学の先生たちも無関心ではいられまい。