毎年、この季節になると、来年の為替予想という依頼がくる。正直言って、統計を専門とする筆者から見れば、日々や1週間程度の超短期間の動きは、サイコロを投げて何が出ると同じランダムウォークであるので、超短期の動きにはコメントしない。
3年程度であれば、かなりの確率でいえるので、コメントする。1年はかなり微妙だが、学者の良心をやや蔑(ないがし)ろにして、無理してコメントすることにしている。できるだけいろいろな人に経済への関心を持ってほしいからだ。その場合でも、できる限りモデルを明示して定量的に述べるようにしている。
一方、為替相場アナリストたちは、独特の直感で話しているようだ。このダイヤモンド・オンラインでも、「為替 2013年 見通し」で検索すると、たくさん出てくる。ただし、それをみると、ほとんど当たっていない。これは名誉のためにいっておけば、日本中のほとんどのアナリストも予想を外している。もちろん、上に述べたように、1年の予測は難しい。しかし、定量分析で予想を述べている人はほとんどいないようだ。実のところ、筆者は100円程度と予想しており、ほぼ当たりである。きちんとした経済理論を学んでいれば、アベノミクスによる金融政策の変化が明確だったので、理論式通りであった。
アベノミクスと為替の
マネタリーアプローチ
アベノミクスといっても、本コラムの読者であれば、筆者が繰り返し書いてきた世界標準の金融政策であることはお分かりいただいているはずだ。簡単にまとめれば、以下の通りである(図1)。