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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

Beyond Deng Xiaoping:改革への道にそびえる最大の壁

加藤嘉一
【第19回】 2013年12月17日
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習近平は何故胡耀邦の歴史的地位を
復活させようとしているのか

前回コラム(習近平が実親・習仲勲の生誕百周年を大々的に祝った真の狙い)では、習近平総書記が実父・習仲勲の生誕百周年記念(10月15日)を大々的に祝った実例を挙げつつ、なかでも毛沢東、トウ小平(Deng Xiaoping、トウの文字は「登」におおざと)、劉少奇、胡耀邦という政治キャリアや歴史的地位、そして国内の政治的評価が極めて異なる4人の最高指導者たちの直接の親族が揃って出席した“習仲勲生誕100周年記念座談会”をケースとして紹介した。

 これは4人の親族が会場に設定された北京の人民大会堂でたまたま出くわしたなどという偶然的事態ではなく、習近平総書記が細心の注意を払いながら綿密に企画した場面であったとレビューした。

 習仲勲氏は改革派の政治家として、特に文化大革命時代数々の政治的迫害を受けながらも、広東省や北京で中国の改革を進めてきた。習仲勲氏の手腕や実力を理解し、彼を政治的に復活させ、重用したのが“中国民主化の星”とまで言われた胡耀邦元総書記であった。

 胡耀邦氏の右腕として、特に1980年代の改革開放の政策決定プロセスに深く関わった習仲勲氏の功績を、実の息子である現在の国家指導者・習近平が大々的に祝うのは、ただ漠然と権威主義と党の威信を国内外にデモンストレーションするためなどという理由によるものではない。権威主義を振りかざし、自らの権力基盤が強固であることを誇示することは、あくまでも戦略的手段に過ぎない。

 むしろ、毛・トウ・劉・胡という中国政治を歴史から未来へ形作っていくために最重要と言っても過言ではない“四家”の間で習仲勲氏の評価に対するコンセンサスを構築・強化することを通じて、“胡耀邦の歴史的地位を復活させる”ための布石を打つことが真の目的である、と前回コラムの結論部分で私なりの、現段階における検証結果を述べさせていただいた。

 と同時に、「それでは、何のために胡耀邦元総書記の歴史的地位を復活させる必要があるのか? 習近平現総書記は、その先に何を見据えているのか?」という問題提起をした。この問題を考え、検証していくことが本稿の目的である。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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