真面目一辺倒では一流にはなれない

 勉強頭脳にすぐれた嶋は、おそらく頭では「外角一辺倒ではいけない」とわかっているのだと思う。けれど、実行できない。結果を先回りして考えてしまうのかもしれない。

 これには、嶋が真面目すぎるということも大いに関係していると思う。

 嶋に限ったことではないが、最近の選手は総じて真面目だ。
 練習はきちんとするし、グラウンド外で問題を起こすことなどほとんどない。
 門限を破ることもないし、その意味では管理は非常に楽だ。

 しかし、真面目一辺倒では一流にはなれない。

 これは長年プロ野球の世界に身を置いてきた私の実感である。

「もっと女を口説け」の真の意味

「もっと女を口説け」
 若い選手たちによく言ったものだ。

 女性を口説くには、ただ強引に迫ればいいというものではなく、その女性の性格や趣味・嗜好などさまざまな情報を集め、効果的なアプローチ法を考える必要がある。

 そのうえで、実際の相手の反応や態度から心理を読み、最も成功する確率の高い作戦を考えなければならない。
 これはまさしく、相手ピッチャーや相手バッターを攻略するのと同じである。

 最近の選手は総じて野球に対する取り組み方が淡白になっている。
 はっきり言えば、向上心や探究心が足りない。女性をもっと口説くようになれば、野球に対してももっと貪欲になれるだろうと考えたのである。

 むろん、対象は何も女性でなくてもかまわない。何でもいい。
 強い興味・関心を持てば、おのずと創意工夫をするし、そのための労苦も厭わない。向上心、探究心、知識欲が旺盛になる。何かしら気づき、発見するはずだ。それが必ず仕事に活かされるのである。

 決して勧めはしないが、博打だってそうだ。私が現役だったころは、遠征先の宿舎に帰れば麻雀や花札などの博打が始まったものだった。

 私は腰に悪いのでシーズン中は麻雀はしないと決めていたけれど、麻雀ほど性格が出る遊びもない。
 適当に遊んでいるのであれば、かけ引きや人間の心理を見抜く力を養うのに役立つし、勝負勘も無意識に身につき、磨かれる。嶋にも勧めたいくらいである。