20歳以降に10キログラム以上太ると、糖尿病の発症リスクが3倍になるようだ。東京大学は公衆衛生学教室の報告から。
調査対象は、36~55歳の日本人男女1万3700人で、このうち、男性が2962人だった。健康診断の数値を5年追跡し、その間の糖尿病発症率と体重変化の関係を分析している。
その結果、20歳以降に体重が6~10キログラム増加した人の糖尿病発症率は、2キログラム未満の人に比べて2.30倍、10キログラム以上増加した場合は、3.09倍に上昇することが示された。BMIで比較してみると、20歳からのBMI変化量が1未満の人と比較し、3~5増加で2.61倍、5以上では3.70倍と4倍近くも発症率が上昇した。
この調査のポイントは、調査時点でBMIが20~24の適正範囲だったとしても、20歳以降の体重の変動幅が大きい場合は発症リスクが高かったこと。
日本人は欧米人に比べて、血糖を調整するホルモンの「インスリン」を分泌する能力が低い。そのため、適正体重~小太り──とはいっても、欧米では適正範囲なのだが──で血糖値の異常が出てしまう。痩せ型といえども、油断はできないのだ。
一昨年、筑波大学の研究者が報告した調査でも、20歳以降に一時でも20歳時の体重プラス10キログラムオーバーしたことがあると、糖尿病の発症率が上昇することが示されている。現時点で肥満(BMIで25以上)状態の場合は97%、痩せ型(BMIで18.5未満)でも、なんと72%も上昇する。
どうやら、日本人男性は中高年期の体重云々より、若いときの不摂生が糖尿病につながるらしい。「せっかく、心を入れ替えたのに手遅れ?」と絶望してしまいそうだ。中高年で一念発起した場合は、体重を現体重の7%以上減らし、かつ「維持」することが鍵になる。適正体重の方は、筋トレで余分な糖を消費してくれる筋肉量を増やし、野菜、果物、乳製品を意識的に摂るといい。
まずは、学生時代のアルバムを引っ張り出して眺めてみること。まるで別人のようにスマート、だったら要注意である。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)