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逆境経営 ~山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法~
【第4回】 2014年1月16日
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桜井博志 [旭酒造株式会社 代表取締役社長]

品質の良さは新鮮な「見た目」で表す!
従来の「旭富士」から「獺祭」に銘柄を統一

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「獺祭」という銘柄には複数の願いが込められています。なかでも、負け組のイメージを払拭し、「シンプルな質の良さを表したい!」という狙いが強くありました。考え抜いた末に、打ち出された銘柄とラベルに、それが結実したのです。著者の桜井博志・旭酒造社長は、1/16(木)のテレビ東京系列「カンブリア宮殿」に出演予定!

獺(カワウソ)の祭り、と書いて<獺祭(だっさい)>。

 これを新銘柄に命名したのは、1990年頃のことでした。きっかけは、東京に本格進出を始めたことです。米を磨き込む精米歩合の違いにかかわらず、旭酒造の酒はすべて「獺祭」といいます。

 当初は、読みづらいうえ、「ダサい」みたいで変な名前だ、とも揶揄されました。しかし、本連載の第1回でも触れたように、今では期待していた以上に親しんで頂ける名前になりました。

 過去、旭酒造の主力銘柄は長らく<旭富士>でしたから、東京も当初はそれでお出ししていたのです。でも、今ひとつ印象が弱い。それに、<旭富士>といった瞬間に、卸や小売店との販売条件などにおいて、“岩国4番手”という負け組酒蔵の不利な商習慣を引きずってしまいます。
 そこで、東京向けの製品の名前として、シンプルで品質のよさを伝えられる新銘柄を…と考えて思いついたのが、この名前でした。

 「獺祭」というのはそもそも、書物や参考資料を広げて、詩文を練っている姿を意味します。その姿が、捕獲した魚を河原に並べるカワウソの習性を思い起こさせるからだそうです。

 そして、明治の日本文化に革命を起こした正岡子規の別号のひとつが「獺祭書屋主人」。若くして病の床につき、身の回りのものを手の届くところに並べている自分を、カワウソに見立てて付けた号だったといわれています。
 この号に惹かれたのは、子規の進取の精神に、私が共鳴していたからでもあります。「酒造りは夢創り、拓こう日本酒新時代」を合い言葉に、伝統や手作りという言葉に安住せず、変革と革新のなかからより旨い酒を造っていこうといきがっていた私にとって、彼の革新性にあやかりたい、という決意表明でもありました。

 また、「獺」という漢字は、旭酒造が位置する「獺越(おそごえ)」という地名の一字と同じです。地名の由来は「川上村に古い獺がいて、子どもを化かして当村まで追越してきた」(出所:地下上申)ことにあるそうですが、なんといっても読みにくい。
 35年ほど前に、群馬県の高崎バイパスでスピード違反をしてしまったときも、白バイのお巡りさんが私の免許証を確認しながら、「これ、なんちて読むんよ」と聞いてきました。そのときから、この「獺」という字を使おう、とずっと狙っていたのです。
 銘柄にこの字を入れることで、地元とのつながりも感じられるし、見た瞬間に「なんて読むんだ?」と、思わず目をとめる効果もあります。

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桜井博志 [旭酒造株式会社 代表取締役社長]

1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。家業である旭酒造は、江戸時代の1770年創業。1973年に松山商科大学(現松山大学)を卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て76年に旭酒造に入社したが、酒造りの方向性や経営をめぐって先代である父と対立して退社。79年に石材卸業の櫻井商事を設立して集中していた。父の急逝を受けて84年に家業に戻り、純米大吟醸「獺祭」の開発を軸に経営再建をはかる。社員による安定的な旨い酒造りを目指し、四季醸造の実現や遠心分離機の導入など改革を進めた。2000年頃から始めた海外販売を本格強化するため、2014年のパリを皮切りに海外直営店を出店予定である。


逆境経営 ~山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法~

純米大吟醸「獺祭」を展開する旭酒造は、約30年前、普通酒を主体とするつぶれかけの酒蔵でした。先代である父の急逝により、急遽三代目を継いだ著者は、目の前の常識を疑い、新たな酒蔵として生まれ変わるべく、改革を進めます。変革を可能にし、海外約20カ国に展開するまでに至った、熱い心と合理的思考法を紹介します!

 

「逆境経営 ~山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法~」

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