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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

殴る蹴るの暴力を受け、はした金で退職の憂き目に!
稼ぐ営業マンがぶつかり続けた“愛されぬ社員”の宿命

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第26回】 2014年1月14日
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 今回は、ここ20年の間に中堅の建設会社や大手生命保険会社などに勤務していた、40代半ばの男性を紹介したい。この男性を仮にA氏とする。現在A氏は、埼玉県内を拠点に生保の代理店を営む。

 彼は、20代から30代にかけて営業マンとして活躍した。その成績は他を圧倒するものだった。だが、いつしか同僚や上司などから妬まれるようになる。そして上司から殴られ、刑事事件に巻き込まれそうになったりした。

 男性は会社員の頃、理不尽な経験に繰り返し遭遇した。今は、会社員の生活をきっぱりと辞めて、自営業者として生きている。なぜ会社員時代のA氏が悶え続けたのかを考えながら、「会社員に求められる資質」について提言したい。

 悶え、苦しんだA氏の判断は、読者にどのように映るだろうか。


「ちょっと俺と一緒に会議室に来い」
部長に呼ばれて突然殴る蹴るの暴行を

取材に応じてくれたA氏

筆者 刑事事件?

A氏 以前、建設会社に勤務している頃に起きた。今も許せない。このあたりでは、名の知れた会社だった。業績もいいからね……。

 ある日、工事関連の部署の部長(52歳)から、「俺と一緒に会議室に来い」と言われた。私は営業部にいたから、その部長は直属の上司ではなかったの。だから、「何かあったのかな」と思いつつ、後について階上の部屋に向かった。

 中に入ると、誰もいなかった。部長は、きっと誰もいない場所をあえて選んだのだと思う。「お前から部屋に入れよ」と言われ、入った。そして、「おい!」と声をかけられたから振り返った。そしたら、いきなり殴られた。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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