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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

粘着質の「追い出しオタク」が役員に出世して暴君化
単純作業の奈落で喘ぐ課長が“10倍返し”を誓うまで

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第17回】 2013年10月29日
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上司が役員になって一層暴君化
追い出し部屋で心が壊れた課長は今

 今回は、連載第2回「心が壊れた課長を追い込む“リストラ面談”全記録」で紹介した男性・A氏に再度話を聞いた。A氏は50代半ば。40歳の頃、一流の外資系金融機関から中途採用試験を経て、今の会社に入社した。会社はメーカーで東証1部上場。正社員数は約1500人、パートなどを含めると3500人ほどだ。

 A氏は正社員で管理職待遇(課長級)だが、4~5年前から所属部署(管理部門)の上司(部長、現在は役員)と仕事の進め方などを巡り、意見がぶつかることがあった。

 数年前、職場の上司からある仕事を命じられる。「研修」という名目で、20代の新入社員などが行う単純な仕事を与えられた。躊躇していると、上司と人事部から「業務命令違反」と言われた。人事部からは、「所属部署を離れ、人事部付となるように」と命令を受ける。

 その後、上司である部長は役員になる。人事部を通じ、Aさんに対して一層の追い出しを迫るようになってきた。「人事部付」となったAさんは今、正社員がやるべき仕事を与えられていない。アルバイトと同じように、ブラック企業の「追い出し部屋」で単純作業をする日々だ。


取材に応じてくれたA氏(都内・新橋にて)

筆者 単純作業の中身は、どのようなものですか。

A氏 会社から送るダイレクトメールの送付先を、入力をするだけの仕事。このデータは、実際には仕事で使われることがない。

 私は半年ほど前に労働組合・東京ユニオンに入り、「仕事を取り上げ、何もさせないことは不当だ」と訴えた。それで人事部は止むを得ず、単純作業の仕事を与えた。私を辞めさせようとする考えには、変わりはないのだと思う。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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