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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

破滅型オーナーに放り出された逆・半沢直樹社長
同族経営の代理戦争で人生を狂わされる社員の悲鳴

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第16回】 2013年10月22日
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オーナー父子と銀行OB社長が対立
同族経営企業で働く社員たちの「悶え」

 今回は、社員数80人ほどの園芸関連会社で働く課長・A氏(44)に取材を試みた。この会社は創業40年ほどになり、業績はおおむね好調だ。5年前には、当時60代前半の創業経営者(現在の会長でありオーナー)が、大手銀行出身の50代前半の男性をハンティングし、後継者とした。

 創業者には実の息子(当時経理部員)がいる。会長は本音としては息子に後を継がせたいようだったが、30代前半でありまだ若い。そこで「ワンポイント」として銀行OBの男性を雇って中継ぎの社長としたが、その社長が勘違いをし、暴走を始めた。そこから、多くの社員を巻き込んだ「悲劇」が始まる。

 5年後の今年3月、ついに創業者である会長は銀行OBの社長を解任し、息子を新たな社長に据えた。元社長はその前後、社員や取引先を前にして「オーナーに復讐してやる!」と息巻いていた。だが今になって、社員らはその惨めな姿を「逆・半沢直樹」とバカにしている。

 今回は、その「逆・半沢直樹」に5年間、部下として仕えたA氏に話を聞くことで、社員が同族経営の会社で生き抜くことの理不尽さや苦しみ、悶えを浮き彫りにしたい。

 A氏とのやりとりについては、よりニュアンスを正確に伝えるため、インタビュー形式とした。取材の内容は、実際に話し合われた内容の9割方を載せた。残りの1割は、会社などが特定できる可能性があることから省略した。


筆者 オーナー(会長)と今年から社長になった男性は、実の父と息子の関係になるのですね。この同族経営の会社に、5年前に大手銀行から来て社長に就任した男性(当時50代前半)がいました。血縁関係は一切ありません。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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