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対談 漂白される社会
【第17回】 2014年1月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
開沼 博 [社会学者],大山寛人

家庭への憧れと、家族を持ちたくない思いの葛藤
入れ墨に込めた加害者家族として生きる決意とは
【大山寛人×社会学者・開沼博】

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売春島や歌舞伎町といった「見て見ぬふり」をされる現実に踏み込む、社会学者・開沼博。そして、母親を殺害した父親に死刑判決が下されるという衝撃的な体験をもとに、現在は、被害者遺族が望まない加害者の死刑があることを訴える大山寛人。『漂白される社会』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、ニュースからはこぼれ落ちる、「漂白」される社会の現状を明らかにする異色対談。
被害者遺族であると同時に、加害者の息子という立場にもある大山氏。第2回では、数えきれない差別を受けるなかで彼に芽生えたある決意、そして、なぜ憎んでいた父親の死刑を望まなくなったのか、その心境の変化にも迫る。大山氏との対談は全4回。

「人殺しの息子は雇えない」と失職

開沼 それまで会わないできたお父さんとはじめて面会したのは、高校を辞めて働き始めたあとのことですね。どのタイミングですか?

大山寛人(おおやま・ひろと)
1988年、広島県生まれ。小学6年生のときに母を亡くし、その2年後、父が自身の養父と妻(著者の母)を殺害していたことを知る。その事実を受け入れることができず、非行に走り、自殺未遂を繰り返す。2005年、父の死刑判決をきっかけに3年半ぶりの面会を果たし、少しずつ親子の絆を取り戻していく。2011年6月7日、最高裁にて父の死刑判決が確定。現在は自らの生い立ちや経験、死刑についての考え方を伝えるべく、活動を続けている。
著書に、『僕の父は母を殺した』(朝日新聞出版)がある。

大山 父親の逮捕から3年半後です。逮捕されたのが中学2年生の終わりだから、16歳の終わりか、17歳くらいだったと思います。

開沼 今はおいくつですか?

大山 今年の2月で26歳になります。

開沼 もう仕事を始めてから10年が経つわけですね。その間は、無職になったこともほとんどなかった?

大山 何らかの仕事に就いてはいます。ただ、一時期スランプというか、ひどい状況にはなりました。ちょうど著書を出す前の話です。講演活動をきっかけに取材をしてもらえるようになり、仕事場の人がその記事を見たそうです。すると、「人殺しの息子は雇えないから」とクビになるということが半年くらい続いて、その間はろくに仕事にも就けず、生活にも苦しんだ状態でした。

開沼 かつて、オウム真理教事件のときにも、犯人やオウム真理教信者の家族が就学を拒否されたことがありました。きれいごとを言えば、「犯罪者の子どもも犯罪者だと言うのはおかしい」とは多くの人が合意可能でしょう。ただ、現実にはそうでもないということですね。

大山 現実はそんなに甘くないですね。最近は、そういう問題も伝えるようにしています。加害者家族に対する差別の実態に目を背けず知ってほしいので。

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開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 

大山寛人(おおやま・ひろと)

1988年、広島県生まれ。小学6年生のときに母を亡くし、その2年後、父が自身の養父と妻(著者の母)を殺害していたことを知る。その事実を受け入れることができず、非行に走り、自殺未遂を繰り返す。2005年、父の死刑判決をきっかけに3年半ぶりの面会を果たし、少しずつ親子の絆を取り戻していく。2011年6月7日、最高裁にて父の死刑判決が確定。現在は自らの生い立ちや経験、死刑についての考え方を伝えるべく、活動を続けている。
著書に、『僕の父は母を殺した』(朝日新聞出版)がある。


対談 漂白される社会

売春島、偽装結婚、ホームレスギャル、シェアハウスと貧困ビジネス…好奇の眼差しばかりが向けられる、あるいは、存在そのものが「見て見ぬふり」をされる対象に迫り続ける社会学者・開沼博。『漂白される社会』の刊行を記念して、人々を魅了しつつも、社会から「あってはならぬもの」とされた対象やそれを追い続ける人物と語り合うことで、メディアでは決して描かることのない闇の中に隠された真実を炙り出す。

「対談 漂白される社会」

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