コーヒーメーカーは、20年進化していなかった。<br />2人のエンジニアが挑むコーヒーの味の革新ブロッサム・コーヒー。銀色の筒に豆を入れると、自動的に温度調節された湯が注がれ、カップ内を一定の温度に保ってくれる。上のレバーを押し下げて、コーヒーをカップに抽出する。レシピやタイミングは、画面がガイドしてくれる Photo by Taro Matsumura

 寒い日が続く。温かい飲み物がありがたい季節だ。今日はコーヒーの話題から始めようと思う。

 筆者が住んでいるサンフランシスコ周辺では「サードウェーブ」と呼ばれるコーヒー文化の第三波がその勢力を拡げている。サンフランシスコ、ポートランドを中心とした新しいコーヒーへの取り組みだ。

 第一波はコーヒーが一般家庭に広まったコーヒーの大衆化、第二波はスターバックスに代表されるクオリティとスタイルの獲得だとすれば、第三波は多様化と持続性、さらなる味の追究と位置づけることができる。大量生産・大量消費、巨大ブランドによる市場独占といった流れから、スモール・ローカル・オープンでシェアなコミュニティへと変化を見せるのがサードウエーブ。

 詳しくは2013年に共著で出版した「サードウェーブコーヒー読本」(枻出版社)で詳しく解説しているのでご参考に。

 日本でサードウェーブコーヒーカルチャーへの注目が高まる一方で、サンフランシスコのコーヒー人の多くが、日本・東京に熱い視線を向けていたことに驚かされた。古き良き喫茶店は毎朝自家焙煎をし、心地よい空間と最高の技でお客さんをもてなす。その姿はサードウェーブに傾倒する人々の憧れでもあり、進歩的でクールと絶賛する。日本のスタイルに、サードウェーブの次のコーヒーシーンを見出そうとする人も少なくない。

 太平洋をまたいだ同じ飲み物に対する切磋琢磨は、東京から西海岸に移り住んだ筆者にとって興奮を隠しきれない、素晴らしい発見だった。

「ブロッサム・コーヒー」とは?

 コーヒーの先端都市であるサンフランシスコと東京。この二都市間で違いを見いだせるとしたら、それはテクノロジーの介在だろう。

 コーヒー文化を観察していると、テクノロジービジネスの変化に重ねることができる。例えば巨大企業マイクロソフトによるソフトウエア独占から、モバイルプラットホームが生まれ、たくさんの小規模なスタートアップがアプリを毎日のように発表するようになり、新しいアイディアやイノベーションが活発に起きている。

 こうしたテクノロジーのアイディアをコーヒーに適用したら何が起きるか? そんなチャレンジをしているスタートアップ企業「ブロッサム・コーヒー(Blossom Coffee)」を取材した。