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岸博幸のクリエイティブ国富論

賃金が増えないのは本当にデフレだけが原因?

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第254回】 2014年1月31日
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 通常国会での論戦が始まりましたが、少し違和感を覚えるやり取りがありましたので、今週はそれを取り上げたいと思います。

海江田代表がした質問のレベルの低さ

 そのやり取りは通常国会冒頭の代表質問で展開されました。まず民主党の海江田代表が、「アベノミクスで格差が拡大した」という趣旨の批判を展開したところ、安倍首相は「長年にわたりデフレが継続し、賃金が伸びていなかった」、「企業収益の伸びが雇用拡大や所得上昇につながる」という趣旨の答弁をして、デフレ脱却が格差是正の鍵になるとの認識を示しました。

 一見すると、海江田氏は民主党得意の格差論でアベノミクスを批判し、それに対して安倍首相はデフレが原因と反論するという、非常にありふれたやり取りではあるのですが、結論から言えば両者とも間違っています。

 まず海江田氏の主張の間違いについて考えてみましょう。アベノミクスは昨年春の金融緩和と財政出動から始まりました。つまり、アベノミクスがスタートしてからまだ1年も経っていません。それなのにアベノミクスで格差が拡大した、とデータで証明できるでしょうか。普通は無理な話です。

 加えて言えば、景気回復過程では常に、まず大企業や大都市から景気が良くなり、それが時間をかけて中小企業や地方都市に波及していくのが通例です。そう考えると、百歩譲ってアベノミクスを始めてからわずか9ヵ月で格差が拡大したと証明できたとしても、それは景気回復の波及過程ではやむを得ないものと考えることができます。

 つまり、海江田代表の主張は、元経済評論家とは思えないくらいにダメだと言わざるを得ません。因縁付けと同じレベルです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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