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2030年のビジネスモデル

患者の臓器を精密3Dモデルに――手術の成功率を高める医工連携の立役者

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第15回】 2014年2月13日
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内壁まで緻密に再現された自分の心臓の3Dモデル

 なんと100人に1人の赤ちゃんが、先天性小児心疾患をかかえているという。その全てが手術を必要とするわけではないが、手術が必要なケースとなれば、赤ちゃんの心臓というのはとても小さく、難度は極めて高い。

 ご覧いただいている写真は小児用の心臓レプリカの内壁である。このレプリカは、患者個人のCTスキャンデータから高速試作技術を用いて製作している。

 素材は実物に近い超軟質の感触を持った樹脂で、心臓内部は弁や大動脈の太さ、内壁まで緻密に再現されている。表面の血管部分は空洞で、カテーテルが通る。実物感覚でメスで切除することも、糸で縫合することも可能だ。この小さな心臓の内部を指で広げて見せてくれているのは、京都にある高速試作開発支援企業、クロスエフェクトの竹田正俊社長である。

心臓手術の未来が変わる

 今、私たちは、あたりまえのようにCTの画像診断を受けている。しかし画像診断だけでは、医師でもわからないことが多い。特に赤ちゃんの心臓は画像による診断が非常に難しい。手術本番で臓器を開いてみてビックリ、こんなはずじゃなかった、ということが常に起こりうる。

 それでも医師は一発勝負の手術に渾身の精神力で挑んでいる。特に心臓の場合、手術は 2~3時間の勝負、それ以上開いていたら命に関わる。ゆっくり考えている暇はない。

 しかしもしも、患者のCTスキャンデータから当人の心臓の精密なレプリカを作り、手術前にシミュレーションができたなら、世界は変わる。医師はまるでデジャブ(既視感)の状態で手術に向き合える。手術時間を短縮し患者の肉体への負荷を軽減できる。手術の成功率を高められ、難易度の高い手術に挑むこともできる。

 この心臓レプリカは、CTスキャンの際に採取されるDICOMデータと呼ばれる世界標準の人体積層データ(輪切りデータ)から、複数のソフトウェアを使って工業用のCADデータに置換し、そこから光造形システムによって3Dの型を作り、最後にウレタン樹脂を流し込んで製作する。

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


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未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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