「工事は完璧」と業者は主張

 年末に愛知県名古屋市の地下鉄駅構内で起こったアスベスト飛散事故の後始末が進まない。

名古屋市営地下鉄・六番町駅の改札口にはアスベスト飛散の「お詫び」が貼ってあった 
Photo by Masayuki Ibe

 すでに当サイトで報じた通り、2013年12月12日、名古屋市営地下鉄名城線・六番町駅構内にある機械室のアスベスト除去作業現場からアスベストの1つでもっとも発がん性が高いとされるクロシドライト(青石綿)が漏えいした。改札やエレベーター乗り場からほど近い機械室前の通路で検出されたアスベストは、空気1リットルあたり710本という異常な濃度で、過去に類を見ない高濃度飛散だった。

 アスベストの漏えいは翌13日まで続いたとみられるが、名古屋市は異常な測定値を確認した13日午前の段階で駅への立ち入り禁止といった措置をとらなかった。そのため、利用者の曝露が長引いた可能性がある。

 事故後、アスベスト除去工事の指導・監督をする名古屋市環境局は、工事を発注した同市交通局に工事の中止させた後、アスベストが外部に漏れた原因を突き止めるとともに、工事を改善させる計画の提出を指導した。

 ところが、名古屋市環境局と交通局に進捗状況をいくら問い合わせても、事故原因については「調査中」「まだわかっていません」との答えが返ってくるばかり。事故から2ヵ月が経過した現在も、名古屋市交通局は改善計画の提出はおろか原因究明の糸口すらつかんでいない状況なのだ。

 それはなぜか。

 工事の発注者である名古屋市交通局が、事故直後に元請けのライフテック・エム(同市)や下請けで入ったアスベスト除去業者、アンサー(三重県桑名市)から事情を聞いたところ、「『工事は完璧だった』『自分の責任ではない』などと主張した」(松井誠司・市交通局営繕課課長)というのだ。

 そのため、機械室の吹き付け材に使用されていたのと同じクロシドライト(青石綿)が機械室の外で検出されたことや、機械室とダクトでつながる地上で検出されていたことから現場からの漏えいと判断した名古屋市側と意見が対立した。

 しかも事故直後、名古屋市環境局の指導で漏えい原因となった機械室の入口の扉を養生用のテープで目張りしてしまった。この措置は駅利用者が通る改札側への漏えいを防ぐためには仕方なかったとはいえ、結果的に、機械室入口に改めて別の隔離養生をしなくては現地に入って調査することもできない状況となってしまった。