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伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

地域に密着した医師であるGP(General Practitioner)の拡充が、高齢化する日本を救う!

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第48回】 2014年2月24日
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GP(General Practitioner)の役割とは何か

前回、専門病院や大学病院へのゲートキーパーの存在について議論した。限られた人材と設備で運営されている専門病院を有効に活用するためには、そうした病院でないと対応できない患者に数を絞り込むことが重要である。そのためにも私たちが日々かかる地域の医師や診療所の役割が重要であると述べた。

 ただ、そこでの書き方に誤解を与える記述があった。「イギリスでは、国民は『ジェネラル・フィジシャン』と呼ばれる一般医を、かかりつけ医として持っている」との部分だ。まず、「ジェネラル・フィジシャン」は「General Practitioner」が正しく、お詫びして訂正する。またその邦訳を「一般医」としたが、これは正しい訳ではなく誤解を招くとのご指摘を受けた。

 たしかに、一般医というと、専門医と対になっているような印象を持たれる。大学病院や専門病院で自分の専門分野の診療を行っているのが専門医であり、それ以外の地域で活動している医師のことを一般医と呼ぶのでは、まるで地域の医師の方に専門性がないように誤解される。

 もちろん、地域で活動されている医師の方に専門性が要求されないはずはない。特殊な手術や難病の治療という専門性とは違うが、住民や患者のあらゆる医療ニーズに対応でき、日々患者と接することで継続的な健康管理やリハビリを支援し、そして看取りなどにも関わるということになれば、そこには専門病院の医師とは違ったかたちの高度な専門性が問われる。

 では、こうした地域で活動される専門医をどう呼ぶべきか。私にコメントを寄せられた専門家の方は「家庭医」と呼ぶのが適切だろうと言われた。患者と日々接する存在で、患者があてにする存在でもあるという意味で、家庭医という言い方は適切であると思う。ただ、以下ではとりあえず邦訳はしないで「GP」と表記して話を進めることにしたい。

 GPの重要な役割としてゲートキーパーというものがある。これが前回強調したことだ。ゲートキーパーの存在があるからこそ、専門病院や大学病院などの限られた資源の配分がより効率的になる。フリーアクセスを基本としている日本の医療制度では、このゲートキーパーの機能を十分に活用していない。しかし、そろそろそれについて、より突っ込んだ議論をすべきだというのが前回の主張だった。

 ただ、ゲートキーパーの役割を強調するあまり、GPがゲートキーパーの役割しか果たさないと誤解されては困る。高級店や途上国のオフィスなどには、どこでも守衛やガードマンが立っている。彼らの仕事は不審者などを中に入れないことである。文字通りゲートキーパーだ。そしてそれ以外の役割はほとんど期待されていない。ようするにゲートキーパーの専業といえる。

 地域で医療行為を行うGPは、ゲートキーパーの専業者ではない。その役割は非常に大切だが、他の部分でも実にさまざまな重要な役割が期待される。もし、前回をお読みになってゲートキーパー以外の役割が軽いように感じられたなら、その誤解は解いておきたい。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

「アベノミクス」によって大きく動き始めた日本経済。いまだ期待が先行するなか、真に実体経済を回復するためになすべき「創造」と「破壊」とは? 安倍政権の経済財政諮問会議議員を務める著者が、日本経済の進むべき道を明快に説く! 

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