本当に電力自由化により
電気料金は下がっているのか

 今国会に電力小売への参入を全面自由化するための電気事業法変更案が提出される予定だ。政府・経済産業省は現在、そのための事前説明を与野党議員に鋭意行っている。

 政府が法案を提出する前にこうした事前説明が行われることは、通常のことだ。

 本稿では、来るべき国会での法案審議を見据えて、経産省が提示しているさまざまな資料を素材にして、慎重かつ入念に審議すべき幾つかの重要な論点について取り上げていきたい。

1月29日に経済産業省が自民党の部会で配布した資料の中に、“ドイツにおける電力自由化と電気料金の推移”という資料がある(図表1参照)。

 経産省の主張は、ドイツの電気料金が再生可能エネルギー費用などによって1998年から2012年にかけて1.5倍に上昇しているが、それがなければ電力自由化によって電気料金は下がっている、という趣旨なのだろう。1998年と2012年の2点間で比較すれば、その主張は正しいように見える。

 しかし、本連載第12回「欧米諸国の先行例を改めて吟味する 電力全面自由化はやはり愚策だ」のような、逐年での電気料金推移を示しながらの検証はなされていないので、そこの説明は必ず求められることになるだろう。