ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

セミ・グローバリゼーション時代の働き方

 拙著『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)では、「国際」の名がつく経営戦略と、「国際」とつかない経営戦略はどう違うのかという議論を解説しました。実際のところ、厳密に言うとこの議論は複雑で、研究者の間ではさまざまな主張が展開されている、まさに終わらない議論でもあります。

 しかし、この議論も、少し整理をして単純化すれば、

  1.条件の異なる複数の市場環境(たとえば複数の国)において、どのようにすれば同時並行的に、適切に事業を行うことができるのかという点。

  2.自社が生まれ育った環境とは異なる、または自社とはつながりの薄い環境において、どのように競合との競争に打ち勝つことができるのかという点。

 この2つが「国際」と名がつく経営戦略の議論の焦点となるかと思います。無論、「国際」という名のつかない戦略も関連してきます。それらも含めて総合的に、しかし、この2点のもたらす意味合いを議論することが、最も重要な焦点となるのです。

「国際」と名がつく経営戦略がなぜ必要なのか。それは、現代という世界が、より強く結びつきあい、しかし同時に、数々の多様性を残している「セミ・グローバリゼーションの時代」であるからです。

 セミ・グローバリゼーションの時代は、すなわち、世界各地で商品やサービスを生産して販売することが容易になった反面、各地域の多様性により注意を払った、高度な事業運営が求められる時代です。

 世界が1つになりつつあるという単純な事実と同時に、世界が1つになり得ないという複雑な現実が、国際経営戦略の必要性をこれまで以上に強く求めているとも言えるでしょう。現代の実務家、多国籍に展開する企業の経営に求められるのは、この複雑な現実にどう立ち向かうのか、という挑戦なのです。

 さて、堅い議論は本の中で眺めていただくとして、今回は少し肩の力を抜いて、実際のところ、本書が示すセミ・グローバリゼーションが進んだ世界の最先端では、個人の立場ではどのような「仕事の仕方」が求められているのかについて書いてみたいと思います。

 まずは、以下の質問について考えてみてください。これは半分笑い話ですが、私がお酒の席でたまにする質問です。

「人間は、地球上で1日に最大で何時間働けるのでしょうか?」