安倍首相が提唱した経済政策「アベノミクス」によって、ここまで日本経済は回復軌道を歩んできた。最大の牽引車は民間消費支出だ。その点で4月からの消費税増税はこれからの日本経済が抱える最大のリスクである。本稿では、消費税増税の影響を考える際にポイントになるであろう5つの視点を定め、直近時点で把握できる動きからどのような事が言えるのかを、2回にわたって考えていくことにしたい。
消費税増税は2つのルートで影響
1972年愛知県生まれ。1996年三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。2001年慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程(計量経済学専攻)修了。現在三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。早稲田大学経済学研究科非常勤講師(2012年度~)。専門は応用計量経済学、マクロ経済学、経済政策論。著作に『日本の「失われた20年」』(藤原書店、2010年2月、第4回河上肇賞本賞受賞、第2回政策分析ネットワークシンクタンク賞受賞)、『アベノミクスのゆくえ』(光文社新書、2013年4月)等。
安倍首相は2013年10月1日に記者会見を行い、2014年4月1日から消費税率を現行の5%から8%へと引き上げるとともに、景気の腰折れリスクを防ぐための経済対策を行うことを表明した。そして経済対策は「好循環実現のための経済対策」(2013年度補正予算)として国費5.5億円を支出することが決まった。
安倍首相が提唱した「大胆な」金融政策、「機動的な」財政政策、「民間投資を喚起する」成長戦略という三つの政策手段からなる経済政策パッケージ――アベノミクス――に対しては政権誕生当初から様々な反応・議論があった。だが「大胆な」金融政策への期待が現実へと変わり、「機動的な」財政政策が実行に移されたことで、円安・株高が進み、景気は回復基調にある。
図1は第二次安倍政権が成立した時点の2012年10~12月期の実質GDPと2013年10~12月期の実質GDP(ともに年率換算、季節調整値)とを比較して、この間の実質GDP成長率に対する各需要項目の寄与度を計算している。
実質GDPは2012年10~12月期から1年後の2013年10~12月期にかけて2.5%成長した。民間消費支出の寄与は1.3%であり、実質GDP成長率2.5%の半分強を占める。そして輸入の寄与はマイナス1.5%と民間消費支出の寄与を上回る強さ(輸入はGDPの控除項目であり、マイナスの寄与とは輸入が増加していることを示す)であり、今回の景気回復の原動力が設備投資や輸出ではなく民間消費であることを確認させる結果となっている。