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安東泰志の真・金融立国論

日本版スチュワードシップコードは
本当に企業経営を変えられるか

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第43回】 2014年3月17日
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去る2月26日、金融庁の有識者検討会が、日本版スチュワードシップコードを公表した。同コードは、その取締役会に対し、企業価値極大化の責務があることを認識させる「外圧」として機関投資家の役割を明確にするものと位置付けられる。コーポレートガバナンス改革と、今回の日本版スチュワードシップコードの普及という、「車の両輪」がうまく回り始めた時に初めて、日本企業にはびこる悪弊が見直しを余儀なくされ、真の日本企業の改革が実現するものと期待される。

「物言わぬ株主」が当たり前だった

 去る2月26日、金融庁の有識者検討会が「責任ある機関投資家の諸原則(案)」(日本版スチュワードシップコード)を公表した。そもそも投資顧問・生損保・銀行・年金などの機関投資家は、原則として何らかの受益者のお金を受託して運用しているものであり、それらの機関投資家が、投資先の企業経営者に対して、その企業価値を上げるように迫ることは、受託者責任そのものである。

 しかし、これまで日本の機関投資家は、「物言わぬ株主」であるのがいわば当たり前であり、極論すれば、企業と機関投資家の「馴れ合い」で物事を進めてきた感が強い。株主総会でも、議案に対しては、総会を開く以前に「友好的な」機関投資家の賛成票が集まっているので、企業経営者たちは、何らの心配もなく議事を進行することができた。

 逆に、反対票を投じたり、総会の場で反対意見を述べるような投資家は「敵対的」とされて総務部あたりからマークされ、あたかも総会屋であるかのような扱いを受け、厳重なる「対策」が練られるというのが日本の慣習であったと言っても過言ではあるまい。それが可能だったのは、日本では、これまで、株式の持ち合いに象徴される、企業経営者相互のもたれ合いの構図が蔓延していたからである。機関投資家の負う受託者責任は忘れ去られていたと言っても過言ではない。今般公表された日本版スチュワードシップコードは、そういう日本的慣習を打破し、企業経営者に少しは緊張感を持たせることができるのだろうか。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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