ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
田中均の「世界を見る眼」

国際秩序に重大な影響を及ぼすウクライナ情勢
日本にとっても他人事ではない「5つの理由」

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第30回】 2014年3月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

武力で国境を変えようとする試み
国際秩序に致命的な影響を与える

 クリミアの住民投票で90%を超える圧倒的多数の人々がロシアへの編入を支持し、クリミアは一方的に独立を宣言して、ロシアへの編入手続きに入るという。プーチン大統領は18日夜クレムリンで演説し、クリミアのロシアへの編入を表明した。

 原稿執筆時点ではロシアがクリミアの編入をどのような段取りで進めていくのか、ロシア人の多いウクライナ東部地域にどういう態度をとるのか不透明であるが、いずれにせよクリミア問題を巡る今後の推移は、世界にとって重大な意味を持つ。

 遠く離れたウクライナの問題は、日本とはあまり関係がないという捉え方は正しくない。日本にも重大な影響を及ぼす問題であるのは何故か、5つの理由を挙げてみたいと思う。

 第一に、ウクライナ・クリミア問題の本質が武力ないし武力の威嚇の下で国境線を変えようとする試みであることだ。これは国際社会の秩序を維持するために、国連憲章にも盛られている大原則に反する。

 ロシアは、「クリミアの住民の60%はロシア系で、ロシア人保護のために行動を起こした」とし、「住民投票は民族自決権に基づく」とする。しかしながら、クリミア自治共和国はあくまでウクライナの主権の下にあることはロシアも承認していたわけであり、ロシアの行動が国際法に違反していることは疑いの余地がない。大国であり国連常任理事国であるロシアの行動は、国際秩序に致命的な影響を及ぼす。

 第二に、ロシアの立ち位置が変わる重大な転機となる可能性があることだ。ソ連邦が1991年に崩壊して以降、欧州の歴史はソ連圏を構成していた東欧諸国が雪崩を打ってEUやNATOに加入し、いわゆる「西側」の境界線がどんどんロシアに迫っていく過程にあった。旧東欧諸国だけではなく、バルト三国もEU、NATOに加入した。

 残されたウクライナなどもEUとの連合協定に向けて動き出したところ、ロシアは厳しい圧力をかけ、EUとの連合協定を断念させ、ヤヌコビッチ大統領のウクライナは親ロに舵を切った。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

「田中均の「世界を見る眼」」

⇒バックナンバー一覧