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領域を超える経営学
【第9回】 2014年3月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
琴坂将広 [立命館大学経営学部国際経営学科准教授]

第9回
日本の経営学と欧米の経営学は何が違うのか?
変わりつつある、2つの異なる「主義」の正体

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ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

日本の経営学と欧米の経営学はどこが違うのか?

 「日本の経営学と欧米の経営学の違いは、どのようなものですか?」

 これは、ヨーロッパで経営学を修めてきた自分が、日本で経営学を議論する際によく受ける質問です。

 正直なところを言えば、その質問に十分に答えることができるほど、日本で行われている研究を熟知していません。それは、私の不勉強とは言えば不勉強です。

 しかし、もう一方の現実として、欧米のトップジャーナルに継続的に出版されている日本の経営学者の方々は、数えるほどしかいないのも事実です。

 とはいえ、日本の研究の質が低いかと言われれば、それは違うと私は考えています。驚くべき時間を費やして入念に調べ上げた事例研究も多く存在し、また、日本の学会が築きあげてきた理論の体系には、日本人として誇るべきものがあるとも感じているからです。

 日本で一般にもよく読まれている経営誌として、『一橋ビジネスレビュー』(東洋経済新報社)という雑誌があります。その各号の前文には、以下のような創刊の志が書かれています。

 「(前略)日本企業の競争力が向上するに従い、欧米からの借り物の経営理論ではなく、日本発の理論的・実証的研究が時代の要請になった。(中略)従って、創刊にあたっての想いは、『日本発の理論的・実証的経営研究をオールジャパンの研究陣で発信する』であった。(後略)」

 この目的に照らせば、日本の経営学は力強い発展を遂げていると言うことができるでしょう。しかし、違いがあるかと問われると、違いがあると感じていることもたしかです。

 もちろん、全般的な傾向としての平均値の感覚を語るのと、それぞれの研究者が実際に行っている個別の研究の現実には大きな開きがあります。日本にも「欧米的」な研究者はおり、欧米にも「日本的」な研究者はいます。つまり、あくまで「平均的に」という議論しかできないのです。

 しかしながら、その「平均的」を考えてみると、日本は比較的に解釈主義・実学重視の立場を取っており、それに比べると、欧米は実証主義・研究重視の立ち位置を取っていると思えます。

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琴坂将広(ことさか・まさひろ) [立命館大学経営学部国際経営学科准教授]

慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学時には、小売・ITの領域において3社を起業、4年間にわたり経営に携わる。 大学卒業後、2004年から、マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルト支社に在籍。北欧、西欧、中東、アジアの9ヵ国において新規事業、経営戦略策定のプロジェクトに関わる。ハイテク、消費財、食品、エネルギー、物流、官公庁など多様な事業領域における国際経営の知見を広め、世界60ヵ国・200都市以上を訪れた。
2008年に同社退職後、オックスフォード大学大学院経営学研究科に進学し、2009年に優等修士号(経営研究)を取得。大学の助手を務めると同時に、国際経営論の研究を進める。在籍中は、非常勤のコンサルティングに関わりながら、ヨットセーリングの大学代表選手に選出されるなど、研究・教育以外にも精力的に活動した。2013年に博士号(経営学)を取得し、同年に現職。専門は国際化戦略。
著書に『領域を超える経営学』、共編著に『マッキンゼー ITの本質』(以上、ダイヤモンド社)、分担著に『East Asian Capitalism』(オックスフォード大学出版局)などがある。
Twitter:@kotosaka


領域を超える経営学

ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏が、3つの異なる視点でグローバル経営の過去、現在、そして未来を語る。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

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