「強迫観念にとらわれたかのようにメールの返信を急ぐ人」、「せっかく一流企業に入ったのに辞めて、所得を減らしてでも自分らしい職場を探す人」……。一見不可解な行動。こうした行動に駆り立てる原因を探っていくと、「認められたい」という思いに行きつくことが少なくない。現代において私たちを悩ませる最大の問題は、経済的不安ではない。「認められない」という不安なのだ。そこでこの連載では、「“認められない”という名の格差」を考えていこうと思う。

 今回のテーマは「ソーシャルゲーム」だ。GREEやモバゲーといった携帯ゲーム人気から始まり、最近では「パズドラ(=PUZZLE&DRAGON)」ブームで運営会社のガンホーの株価が急上昇したりと、まさに社会現象を引き起こした。しかしソーシャルゲームブームの裏で、「コンプガチャ問題」に代表されるように課金地獄にハマる人や、その他様々な問題が噴出している。そこで今回は、ソーシャルゲームブームの背景をひもときながら、承認を切り口にソーシャルゲームにハマるユーザーのモチベーションを考えたいと思う。

 僕自身はソーシャルゲームに無知なので、黎明期からソーシャルゲームを制作するある会社のディレクター、佐々木さん(仮名)にお越しいただき、ソーシャルゲーム事情の最前線を伺うことにした。

そもそもソーシャルゲームって何?
ちゃんと定義付けができてますか?

 インタビューの前に、佐々木さんに「ソーシャルゲーム」と「ゲーム」の違いをわかりやすく説明してもらった。

 いわく、「ソーシャルゲーム」は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などのコミュニティを活性化させるのを目的としたゲームを指す。つまり、ゲームの前にソーシャル(オンライン上の人間関係)がある。たとえば、GREEやモバゲーは元々SNSだったが、ここにゲームを追加したら人気を得たという経緯を経て、結果的に2社ともソーシャルゲームが中心の会社となった。

 かつて主流だった据置型のゲームや「ニンテンドーDS」なども、通信機能によってオンライン上のコミュニケーションをゲームに取り入れることはあるが、こちらの場合、あくまでもゲームが中心。コミュニケーションは付属的にあるものなので、ソーシャルゲームに含まない。

 この概念からすれば、「パズドラ」などもGREEやモバゲーなどソーシャルコミュニティを介さないので厳密に言えばソーシャルゲームに含まないとする意見もあるが、慣例からアプリを使ったゲームはソーシャルゲームに分類されることが多いようだ。