ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

なぜ日本は「クジラ裁判」に完敗したのか
ノスタルジー食文化を脱する『鯨食2.0』の必要性

樋口直哉 [小説家・料理人]
2014年4月7日
1
nextpage

 我が国が南極海で実施している調査捕鯨について日豪が争った国際裁判で、日本完敗といえる判決が出た。この結果には、僕自身も一人の日本人として、一応のショックを感じている。

 はじめに述べておくべきことは、今すぐ鯨食が危機に陥るわけではないということだ。南極海での調査捕鯨は実質、不可能になったが、まだ沿岸および北西太平洋でおこなわれている調査捕鯨は許されている。さらには南極海の調査捕鯨は全体では2割程度、在庫も過剰なことから、すぐに影響はないという。

 問題は「調査捕鯨」という方法が否定されたことだ。同じロジックで照らしあわせれば、今後、その他の地域で行われている調査捕鯨も継続できなくなる可能性がある。

 『調査捕鯨敗訴 鯨料理店主「ほんま悔しい」「日本の食文化守りたい」』(産経新聞)『鯨の街「食文化失う」 調査捕鯨中止命令に業界衝撃』(朝日新聞)と新聞は報じているが、たしかに関係者達の失望は察するにあまりある。

日本敗北は絶滅危機が原因ではない
論理的に破綻していた“調査捕鯨”

鯨肉の刺身盛り合わせ

 今回の結果が出たのは「調査捕鯨が科学的に行われているとは思えない」と判断されたからだ。前述の朝日新聞の記事のなかで小松正之氏は『反捕鯨団体の妨害活動以前から、鯨肉が余るために日本は計画通りの頭数を捕獲しておらず、「調査捕鯨ではない」という豪州の主張が通ってしまった』と語っている。

 自ら設定した獲るべき頭数を獲っていないのだから、たしかに研究もなにもない。

 問題点として挙げられたのは他にもある。調査捕鯨では耳骨から鯨の年齢などを調べるほか、胃の内容物を調べて生態系の観察をすることを目的としているが、そのために日本は『三種類の鯨を捕獲する』としていた。ところが判決では『実際に獲っているのは一種類』と指摘された。

 調査捕鯨というのは科学的調査を目的としたものだ。その調査がなされていないのだから「調査捕鯨といって実際には商業捕鯨である」という豪州の主張はある意味正しい。それらの指摘に対して日本は有効な反論を持たなかった。

 日本が敗れた理由は鯨がかわいそうだからでも、絶滅危機に瀕しているからでもない。論理的に破綻していたからなのだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


DOL特別レポート

内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。

「DOL特別レポート」

⇒バックナンバー一覧