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世界がもしご近所さんだったら

続・なぜ日本人は交渉で負けるか
超難関「世界クジラ交渉」に学ぶ“勝つ技術”

まがぬまみえ
【第16回】 2013年8月28日
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交渉とは言葉の応酬である。議論に勝つためなら、何でもしてくる相手がいる。言いがかりやゴリ押しにも怯まずに、常に冷静沈着を心がけること。むろん、相手の挑発になど、絶対に乗ってはいけない。

とまあ、常識的にはそう言われている。しかし、人間だから「バカヤロー!」と叫びたくなる時だって、あるかもしれない。そんな時、何が交渉人を踏み留まらせる力になるのだろうか?

前編に続き、大国相手にタフ・ネゴシエーターぶりを発揮してきた元官僚の小松正之さんに、交渉人として必要な心得について伺った。

「クジラ交渉」で知った事実
交渉には膨大な知識が必要だ!

――ところで、小松さんが国際交渉のおもしろさに目覚めた原点は何だったのでしょうか?

こまつ・まさゆき
政策研究大学院大学客員教授(リーダーシップ・交渉権、海洋政策) 1953年岩手県生まれ。東北大学、米エール大学経営学大学院卒。経営学修士(MBA)、東京大学農学博士号取得。1977年水産庁に入庁後、資源管理部参事官、漁場資源課課長等を歴任。国際捕鯨委員会、ワシントン条約、国連食糧農業機関などの国際会議に出席し、水産業の発展に従事。2005年、米ニューズウィーク誌「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。主な著書に『国際マグロ裁判』(共著、岩波新書)、『日本人とクジラ』(ごま書房)、『これから食えなくなる魚』(幻冬舎)、『劣勢を逆転する交渉力』(中経出版)、『震災からの経済復興13の提言』(共著、東洋経済)『なぜ日本にはリーダーがいなくなったのか?』(マガジンランド)などがある。

 それはやはり、クジラですね。私はずっと、水産庁の漁業交渉官として捕鯨交渉も担当していたんです。

 捕鯨問題というのは狭いジャンルのように思われるかもしれませんが、交渉で求められる知識は、じつに膨大です。まず、クジラの生態を生物学的に理解しないといけない。資源管理には、数学や統計学の知識も必要。海洋汚染のことを調べようと思えば、化学の知識もなければ話にならない。

 それと、交渉を有利に進めるにあたっては、日本人がクジラをどのように捕獲し、食べてきたかという歴史や食文化も調べる必要がありました。もちろん、英語力は必要ですし、ルールである国際条約や会議進行の手続き、国際情勢も知っておかねければならない。要するに、捕鯨1つとっても、それをテーマに交渉で勝つには、想像以上に幅広い知識が求められるということを、その時に改めて知った訳です。

 交渉は難しいからこそやりがいもあるし、簡単な交渉では、人は育ちません。

――つかぬ事ですが、マグロならいざ知らず、クジラとなると身近に感じる人は少ないような気がします。個人的に、それほどクジラを食べたい、という訳でもない。だからつい、どうしてそんなに一生懸命交渉する必要があるのかな……とも思ってしまうのですが。

 自分が食べたいから交渉するんじゃないんです。そこはべつに、どうでもいい。

――ど、どうでもいいんですか!?

 役人は全体の奉仕者ですから。

 法的にも科学的にも文化的にも正しいと信じられることがあれば、主張すべきところはきちんと主張して、世界から尊敬されたい。そう思うのが当たり前の気持ちであって、私の場合、その気持ちがあったからこそ頑張れたし、交渉で勝てたのです。

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世界がもしご近所さんだったら

メディア論で知られるマーシャル・マクルーハンは1960年代、「グローバル・ビレッジ(地球村)」という概念を提唱し、大いなるセンセーションを巻き起こしました。世界がやがて1つの村のようになるという彼の予言はすっかり現実のものとなり、わたしたちに様々な意識変革を迫っています。

物理的・経済的に世界との距離が縮むほど、心理的・文化的には目に見えない摩擦が増えていくもの。村におけるご近所づきあいのコツは、信頼できる茶飲み友だちに聞くのが一番。という訳で、“村の掟”に詳しいご近所さんやその道のツウを探し、訪ねてみることにしました。21世紀を生きるビジネスパーソンには欠かせない、世界との良好なつきあい方を探っていきます。

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