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領域を超える経営学
【第16回】 2014年4月28日
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琴坂将広 [立命館大学経営学部国際経営学科准教授],安宅和人 [ヤフー株式会社CSO]

特別対談
コンサルも、学者も、本質を見極める力が不可欠
5割が“消える”博士課程で活かした異業種の経験
【ヤフー株式会社CSO・安宅和人×琴坂将広】

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イェール大学でPh.D.(博士号)を取得した脳神経科学者であり、マッキンゼーのコンサルタントとして活躍し、現在はヤフー株式会社でCSO(チーフストラテジーオフィサー)を務める安宅和人氏。そして、ベンチャー企業の経営者からマッキンゼーのコンサルタントを経て、オックスフォード大学でPh.D.を取得し、現在は立命館大学経営学部准教授として教鞭を執る琴坂将広氏。
マッキンゼー時代をともにし、それぞれの専門領域を超えて活躍する安宅氏と琴坂氏が、さまざまなトピックについて語る特別対談。対談は全3回。

物事の本質さえ伝えられれば生きていける

琴坂 最初に安宅さんとお会いしたのは、安宅さんがアメリカから帰国されてから1年くらいの頃ですよね。ご存じのように、私は安宅さんと仕事をご一緒した後に、マッキンゼーのドイツのオフィスに行きました。ドイツに行った後は、結局、9ヵ国くらいを転々として仕事をしたのですが、きっと安宅さんに教えていただいたことがなかったら、自分は生き抜けなかったと思います。

安宅 それはありがたいな。

琴坂 最初に感動したのは、安宅さんがプロジェクトの初期のインターナル・ミーティング(社内メンバーだけの検討会議)に、いわゆる「コンサルの資料」を持っていかなかったことです。それまでは、いろいろと分厚い資料を用意する人ばかりを見ていたので、「これだけで十分。それで本質が伝わるからオッケーだ」と言っていたのに感動したのを覚えています。

安宅 サブスタンス(本質的に意味のある内容)とクライアントの方々との信頼があれば大丈夫ですから、基本的に(笑)。

琴坂 英語1つ取ってもそうですね。それは安宅さんもご存じだと思いますけど、僕の英語は微妙だったじゃないですか。「こんな英語じゃダメだ!」と言われた記憶があります(笑)。

 私がドイツに転籍した後でも、ファクトベース(事実をもとにした議論)、まさにイシュードリブン(課題を中心とした検討)を実践していくことができたからこそ、拙い英語であっても、こいつの言うことは聞いた方がいいんじゃないかと考えてもらえたのだと思います。

安宅 サブスタンスだけあれば生き延びることができる(笑)。

琴坂 本当におっしゃる通りだと思います。海外でミーティングに参加しても、参加者はそれぞれいろいろなことを言ってはいますが……。

安宅 たいしたこと言ってないからね。

琴坂 そう、たいしたこと言ってないんですよ。

安宅 いくつかの国の人なんかはまくしたてて話すけど、同じことを100回言っても仕方ないじゃんって思うこともある(笑)。

琴坂 彼らはたくさんのことを言っているので、100回言ったら10回くらいはいいことを言っていて、それを中心に物事が動いていくわけですよね。私は100回も意見を言えません。ただ、10回の自分が意見を言えるところで、さくっと鋭い意見を刺すことができたのは、安宅さんと働いたあの期間があったからじゃないかなと思います。

安宅 よかったです。もし、そうだとしたら嬉しいです。

琴坂 言葉が不自由だったので、逆にコンサルティングの価値を少しずつ理解できたと思います。それはやはり、本質を突き詰めるという行為であり、本質的な問題解決を、そしてそれを実現するスキルを、クライアントさんと一緒に作り上げて行くという行為なのだと感じました。

安宅 すばらしい。

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琴坂将広(ことさか・まさひろ) [立命館大学経営学部国際経営学科准教授]

慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学時には、小売・ITの領域において3社を起業、4年間にわたり経営に携わる。 大学卒業後、2004年から、マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルト支社に在籍。北欧、西欧、中東、アジアの9ヵ国において新規事業、経営戦略策定のプロジェクトに関わる。ハイテク、消費財、食品、エネルギー、物流、官公庁など多様な事業領域における国際経営の知見を広め、世界60ヵ国・200都市以上を訪れた。
2008年に同社退職後、オックスフォード大学大学院経営学研究科に進学し、2009年に優等修士号(経営研究)を取得。大学の助手を務めると同時に、国際経営論の研究を進める。在籍中は、非常勤のコンサルティングに関わりながら、ヨットセーリングの大学代表選手に選出されるなど、研究・教育以外にも精力的に活動した。2013年に博士号(経営学)を取得し、同年に現職。専門は国際化戦略。
著書に『領域を超える経営学』、共編著に『マッキンゼー ITの本質』(以上、ダイヤモンド社)、分担著に『East Asian Capitalism』(オックスフォード大学出版局)などがある。
Twitter:@kotosaka

安宅和人(あたか・かずと) [ヤフー株式会社CSO]

1968年、富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。平均7年弱かかるところ3年9ヵ月で学位取得(Ph.D.)。2001年末、マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの1人として、飲料・小売り・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド建て直し、商品・事業開発に関わる。また、東京事務所における新人教育のメンバーとして「問題解決」「分析」「チャートライティング」などのトレーニングを担当。2008年よりヤフー株式会社に移り、現在は執行役員・チーフストラテジーオフィサーとして幅広い経営課題・提携案件の推進などに関わる。
著書に『イシューからはじめよ』(英治出版)がある。


領域を超える経営学

ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏が、3つの異なる視点でグローバル経営の過去、現在、そして未来を語る。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

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