ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

大川小卒業生が「大切な居場所を壊さないで」と表明
学習支援スタッフが証言する子どもたちとの3年間

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第39回】 2014年5月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
意見表明をした大川小卒業生の5人
Photo by Yoriko Kato

東日本大震災の大津波で、津波の直撃を受けて壊れた石巻市立大川小学校の校舎について、同小の卒業生5人が4月6日、思いを発表した。5人はそれぞれ、「自分たちの大切な居場所である母校を失いたくない」「大川小学校で起きたことをこれからも伝え続けていきたい」などと訴え、校舎保存のための活動をしていきたいと話す子もいた。

大川小は2011年3月11日の地震発生後、全校生徒が校庭に50分間待機。保護者等に引き取られた児童以外は、逃げ遅れて津波に飲まれた。山に打ち上げられるなどして児童4人と教職員1人が助かったものの、教職員10人を含む、全84人が死亡・行方不明となっている。

“震災遺構”にまつわる動きとして紹介されることが多いこの話題だが、今回はこうした意見表明会が開催されるに至った背景を紹介したい。

「大人に思っていることを聞いてもらえない」
そんな子どもたちに起きた“変化”

大川の子どもたちを支援している「緊急子どもサポートチーム」の佐藤秀明さん
Photo by Y.K.

 「大川小学校の卒業生たちと話してみたら、“校舎を遺したい”と言っている。高校受験が終わったら、改めて思いをちゃんと聞く場を設けようと思うのだけど……」

 今年の1月下旬。NPOここねっと発達支援センターの佐藤秀明理事長が、大川地区の子どもたちの“変化”について、驚いた様子でこう話してくれたことがあった。

 ここねっとは、大川小学校の子どもたちを取り巻く状況に直接向き合ってきた支援団体だ。東日本大震災後、宮城県内で学習支援や子どもの心理支援を行っていた保育心理士らと共に、同NPO内に「緊急子どもサポートチーム」を立ち上げ、高校受験を迎える大川地区の卒業生たちに対して、学習支援を行ってきた。

 佐藤さんやスタッフは、大川地区の子どもたちを取り巻く状況に危機感を募らせてきた。

 「周囲の大人からの影響が大きく、様々な思いを抱えている大川の子どもが、自分で、“こう思っている”と聞いてもらえる環境が、日常に失われているのではないかと感じています」

 佐藤さんは、東日本大震災から3度目の3月11日が近づいてきた頃から、県内各地の家庭から、緊急的な支援要請が寄せられることが増えた。

 「大川に限らず、県内には、仮設暮らしが長引き、生活もままならないまま、気持ちのバランスが取り戻せずに苦しんでいる保護者がいます。学校の先生だって大変です。大人たちが子どもの気持ちを聞いてあげるどころではない場合、子どもたちがストレスをまともに受けてしまう」(佐藤さん)

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

⇒バックナンバー一覧