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大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

大川小遺族が「明らかに人災」と提訴
総額23億円の損害賠償請求

池上正樹 [ジャーナリスト],加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第38回】 2014年3月10日
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提訴のために仙台地裁を訪れる大川小遺族。この日は8人の遺族が揃った
Photo by Yoriko Kato

 3月10日午後1時30分、学校管理下で東日本大震災の津波によって児童74人、教職員10人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の遺族が「救えるはずの子どもの命を守る義務を果たさなかった」などとして、宮城県と石巻市を相手に損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こした。

 訴えを起こしたのは、いまだに行方不明のままの子どもも含め、大川小で津波の犠牲になった23人の児童の19家族(夫婦10、父親のみ9)の計29人。請求額は、児童1人あたり1億円、総額23億円に上る大型訴訟となる。

震災当日の過失責任のみならず
不誠実な事後対応も加味

「本来は、提訴という形での責任追及はあってはならないと思う」と学校の事後対応を厳しくい批判した中村次男さん
Photo by Y.K.

 震災発生当時、大川小学校では子どもたちを校庭で待機させ続け、川沿いの堤防に向かって移動を始めたのは、地震が起きてから50分近くも経ってからだった。

 その間、ラジオや子どもを引き取りに来た保護者が大津波警報を伝え、防災無線のサイレンが鳴り、広報車が高台への避難を呼びかけている。しかし、学校側は、すぐ近くの裏山に登ったり、スクールバスを使ったりすることもなく、子どもたちを1メートルも上に避難させることができないまま、津波に巻き込まれた。

 遺族たちは、訴状の「はじめに」の中で、こう訴える。

 「児童は津波により死に至ったのではない。学校にいたから死ななければならなかった。

 もし、先生がいなかったら、児童は死ぬことはなかった。本件は、明らかに人災である」

教職員に対する複雑な胸の内について語る遺族。2人の息子を亡くした高橋春夫さんは、A教諭の口からの説明を求めた
Photo by Y.K.

 訴えによると、そうした学校側の災害対応マニュアルの不備や、津波の避難訓練を行ったことがないなどの事前対策を怠った校長、教頭、A教務主任の安全配慮義務違反を指摘。

 震災当日、校長、教頭、A教務主任、その他の現場にいた教諭が津波を予見し、被害を回避できたにもかかわらず、避難行為に出なかったという不作為(注意義務違反)によって児童の命が奪われたことから、石巻市は国家賠償法1条の責任を負うとしている。また、同校教職員の費用負担者である宮城県についても、損害の賠償をすべき責任があるとしている。

 また、遺族たちが市教委から受けた震災後の不誠実な事後対応による精神的苦痛についても、遺族の強い意向により加味された。

 この事後対応を巡っては、震災直後から、市教委や学校側が、遺族たちには理解できないような対応を取り続けた。

 例えば、唯一、生き残ったA教諭はなぜ、逃げ込んだ整備工場に子どもたちの救済を求めなかったのか。なぜ当時の校長が被災した学校現場に来たのは、6日も経ってからだったのか。校長が市教委に「残っていた児童を校庭避難」「引き渡し中に津波」と語った報告書が1年以上も遺族に開示されず、「校長の側聞」とされたのか。そして、震災2ヵ月後の市教委による子どもたちからの聴き取りメモは一斉に廃棄され、地震発生後に「山に逃げよう」と訴えた子どもの証言がなかったことにされた。その後に開かれた第2回説明会も1時間で打ち切られたうえ、「説明会はこれが最後」と宣言されて、遺族たちが傷つけられた。

 こうした事後対応を含む真相の解明を期待されたはずの第三者委員会の検証も“失敗”に終わり、遺族たちを大きく失望させた。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

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