ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
田中秀明の予算の政治経済学入門

法人税減税と財政再建(後編)
減税には信頼性の高い財源計画が必須

田中秀明 [明治大学公共政策大学院教授]
【第9回】 2014年5月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前編では、主に法人税と経済成長の関係について述べた。一般論としては、法人税率の引き下げと課税ベースの拡大という組み合わせは望ましいが、内部留保を蓄えた日本企業の現状を考えると、税率引き下げはそれほどの効果は期待できないかもしれない。後編では、まず政府内での検討状況を紹介し、その問題点を指摘する。そして、経済成長と財政再建の二兎を追う英国の取組みを紹介し、財政再建のあり方について考える。

経済財政諮問会議等での検討

 法人税率の引き下げを巡って、政府の関係機関が年初より検討を進めている。安倍首相が国際会議で法人税改革の検討に着手すると述べたからである。関係機関の資料を概観しながら検討の方向や内容を検証する。

 法人税率の引き下げを強く主張しているのが経済財政諮問会議である。諮問会議は首相が議長を務めており、また4人の民間議員のうち半分は経済界出身であり、減税を求めるのは当然の動きである。2月20日の諮問会議に提出された民間議員資料では、①法人税改革はマクロ経済運営全体という大きな枠組みの中で考えるべきこと、②まずはデフレを脱却し、強い経済に向けた体質改善を合わせて行うことにより法人税収増を実現すべきこと、③こうしたアベノミクスの成果による増収の還元等によって、法人税率を25%に引き下げることが述べられている。

 順番どおりに素直に読むと、税収が増えてから法人税率の引き下げを行うようにみえる。そして、諸外国や日本の法人税収の動向を踏まえ、法人税率を引き下げた場合であっても、法人税収が増える可能性があると指摘している。

 諮問会議では、麻生財務大臣は、法人税減税は財政健全化の観点からの検討が必要であるとして、財源の確保の必要性を訴えているが(1月20日の諮問会議提出資料)、諮問会議の資料では、財源の確保についてほとんど触れられていない。財務省の推計では、法人実効税率1%の引き下げは約4700億円の減収をもたらす。4月4日の諮問会議の民間議員資料では、財政健全化に向けた更なる努力が必要と述べているものの、不思議にも、法人税減税に関する財源の問題については一言も触れられていない。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

田中秀明[明治大学公共政策大学院教授]

たなか・ひであき
1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年・日本評論社)、『日本の財政』(2013年・中公新書)


田中秀明の予算の政治経済学入門

日本政府の抱える借金は、何とGDPの約2倍に達する。財政再建は待ったなしと、これまでに何度もトライされてきた。だが、いずれもうまくゆかず借金は膨らむばかりだ。なぜ、財政再建はとん挫するのか。財務省出身で、気鋭の財政学者が、予算策定から決算至る予算の一生に分け入り、制度・仕組みの問題点を指摘し、無駄をなくし、効率的な予算を実現するため方策を提言する。

「田中秀明の予算の政治経済学入門」

⇒バックナンバー一覧