去る1月15日、安倍政権の最初の予算となる平成24(2012年)年度補正予算が閣議決定された。「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の財源を裏付けるための予算であり、いわゆる「アベノミクス」の柱の1つである。日本ではこれまでも補正予算による景気対策が繰り返されてきたが、これまでとどう異なるのか。日本における補正予算の基本的な問題は既に第4回で議論したが、今回の補正予算について改めて考える。景気刺激策の有効性そのものは否定しないが、現実の政治状況では、真に効果のある施策を選定し、それを適時かつ適切に執行することは極めて難しいことを述べたい。折角、お金を使っても、有効に使われないのが現実である。

なんでも「あり」にならないか

 最初に、緊急経済対策の中身を見よう。緊急経済対策は3つの重点分野からなり、第1は復興の加速と事前防災、第2は民間投資の喚起、第3はくらしの安心の確保と地域活性化、である。これらの項目そのものがおかしいと否定する人いないだろう。筆者が質問したいのは、この項目に該当しない対策あるいは予算が存在するのか、である。公務員の給与といえども、事前防災や安心確保のためといえば正当化できる。要するに、説明次第であり、なんでも「あり」なのである。復興予算が被災地以外で使われた問題を思い出してほしい。

 この緊急経済対策の財源となるのが、平成24年度補正予算である。対策がなんでもありであれば、予算もなんでもありとなる。現実には、各省庁は、予算を獲得するために、様々な対策を盛り込んだのである。基礎年金の国庫負担部分を除く日本再生にかかる補正予算の規模は、約10.3兆円である。政府の説明では、これにより、GDPが2%、雇用が60万人増えることになる。積算根拠は十分に説明されていないので、この数字が真に正しいのかを判断できないが、それほど単純な問題ではない。以下では、補正予算の問題を整理する。

 第1に、昨年12月26日に政権が発足してから、わずか3週間程度で、真に効果のある事業を選定することは難しいことである。必要な予算や重要な予算は、当初予算に計上されていたはずだ。逆にいえば、計上されなかったものが、少なからず補正に計上されていると推測される。補正予算の詳細が判明していないので、現状ではわからないが、事業仕分けで削減や見直しの対象となったものが、少なからず含まれているのではないか。事業の名前だけでなく、中身を吟味する必要がある。