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北朝鮮記者拘束事件で注目された
米カレントTVの意外な正体

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第57回】 2009年8月19日
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 5ヵ月に及ぶ北朝鮮での拘束を解かれた2人のアメリカ人女性ジャーナリスト。クリントン元大統領が交渉の末に連れ戻した2人が、ロサンゼルスの空港でタラップを降り、家族と再会する様子は感動的だったが、はて、日本人にとって聞き慣れないのは彼女たちの肩書き「カレントTVのジャーナリスト」だろう。

 カレントTVは、クリントン時代の副大統領アル・ゴアが共同設立者に名を連ね、現在も会長を務める新手のメディア企業だ。

 今回の拘束問題でいったい何が起こったのか。2人の女性ジャーナリストは「みなさんのご協力に感謝します」といった内容の短いビデオを同社サイトに掲載しているだけで、今のところ事の詳細については何の報道もない。カレントTVがいずれ突っ込んだドキュメンタリーを放映するのか、あるいは北朝鮮との間に何らかの取り決めがあって報道自粛するのかは不明だが、明白な事実はこの事件のおかげでカレントTVの知名度がぐっと上がったことである。

 カレントTVが設立されたのは2005年。拠点はサンフランシスコで、ゴアと共に創設者として名を連ねるのは、ジョエル・ハイアットというビジネスマン兼弁護士。民主党の財務担当を務めたこともある人物だ。ハイアットは最近まで同社のCEO(最高経営責任者)職にあったが、現在は副会長。CEOにはMTVのマーク・ローゼンタール前会長が就いている。

 創業時を振り返れば、カレントTVは、ケーブルテレビ局や衛星放送向けの番組提供者というよりも、むしろ視聴者参加型のインターネットメディアとして鳴り物入りで登場し、世間の注目を集めた。つまり、当時騒がれていたウェブ2.0の潮流に乗り、コンテンツはユーザーによるビデオ投稿になるという想定だった。ターゲット視聴者は、18~35歳の若者層。ヒップな新メディアだが、ユーチューブよりはまともなコンテンツが集まるサイトになるだろうと期待されていたわけだ。

 だが、その後は紆余曲折を辿る。

 ユーザーによるユーザーのための“P2Pメディア”を目指していたが、はっきり言って、サイトを賑わすほどの投稿が集まらなかったのだ。とはいえ、そのまま思考停止には陥らなかった。後述するように、プロのコンテンツも揃え、生き残った。現在のカレントTVサイトは、メディアのひとつの形として間違いなく参考にはなる。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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