ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
超入門 資本論
【第5回】 2014年6月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
木暮太一

なぜ年収1000万円でも、生活が苦しいのか?
サラリーマンが抱えるジレンマの秘密
教養として知っておきたい『資本論』のエッセンス

1
nextpage

「働いても働いても給料が上がらない」「いつまでたっても生活が楽にならない」そう感じる人は多いだろう。しかし、これは頑張りが足りないわけでも、企業がブラック化しているわけでもなく、資本主義のルールに基づいて給料が支払われているから。常に生活がカツカツとなる本当の理由とは何か?

給料を高くするには?

 これまで4回の連載を通して解説してきたとおり、給料は労働者が出した成果で決まっているのではなく、労働力の価値、つまり「その労働者が明日も仕事をするために必要なコスト」で決まっています。

 この「必要なコスト」には、食事・住居などの体力を回復・維持させるために必要なお金だけでなく、その仕事をするために必要な知識・経験・技術を揃えるためにかかるコストも含まれます。

 前回(第4回)で、医者や弁護士など、専門的な知識や長年の経験が必要な仕事は、そのために必要な知力を身につけるのに膨大なコストと労力がかかり、そのため医者や弁護士の給料は高い、という話をしました。

 そして、現代の厚生労働省の統計データからも、マルクスの理論が当てはまっていることを確認しました。つまり、給料を高くするためには、「労働力の生産コスト」を引き上げることがポイントなのです。

 Aさんの仕事をするのには、レベルAの知識や技術が求められるとします。そして世間一般的に、レベルAの知識や技術を身につけるのに、100時間かかるとしましょう。

 一方、Bさんの仕事をするのには、レベルBの知識や技術が求められます。こちらのレベルBの知識や技術を身につけるには、200時間かかると思われています。この場合、理論的に考えるとBさんの方が時給が高くなります。

 商品の原材料に、その商品をつくるためのスキル習得費が含まれるのと同様、労働力としての商品にも、「その仕事をするために必要なスキル」を身につけるために、かかった勉強量(労働量)や費用が考慮されます。食費、家賃、洋服代、ストレス発散のための飲み代の他に、技術習得費が「労働力の価値」として考慮されるのです。

 レストランのシェフになるためには、調理師免許を取り、修業しなければいけません。その修業があって、初めてシェフとして働くことができます。つまり、その修業期間が「シェフとして働く」という労働力の「原材料」になっているわけです。だから、シェフの労働力の価値には、日々のシェフの労働だけでなく、この修業期間にかけた過去の労力も含まれるのです。

 同じように、大学の先生になるためには、専門分野の知識を身につけるために勉強し、論文を書かなければいけません。この勉強期間や論文を書くのに費やした労力も「大学の先生の労働力の価値」に加算されます。

 また、免許がなければできない職業があります。もし、その免許を取るのに100万円かかったとしたら、そのときかかったお金は、その仕事をする労働力の価値に加算されます。

 ただし、100万円かかって資格・免許を取得しても、初回の仕事でいきなり100万円全額を「労働力の価値」として上乗せされるわけではありません。この資格・免許の有効期間を考慮し、その期間内で「100万円」を均等割りして労働力の価値に上乗せされるようなイメージです。

 いずれにしても、その仕事をできるようになるために必要な準備期間、その準備に費やした労力も「労働力の価値」として加算されるのです。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法

効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法

鈴木 秀明 著

定価(税込):本体1,400円+税   発行年月:2017年6月

<内容紹介>
よく出る問題ほど後回しにして、「捨てる・詰め込む・追い込む」引っ越し作業のように、短期集中サイクルで絶対に忘れない勉強法。やらないところを決めて、不必要なところはバッサり切り落とし、最後の1日で確実に覚える技術

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍

(POSデータ調べ、6/18~6/24)



木暮太一 

[作家、一般社団法人 教育コミュニケーション協会 代表理事]

慶應義塾大学経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。
学生時代から難しいことを簡単に説明すること、頭の中を言語化することに定評があり、大学時代に自作した経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から好評を博し、現在では、企業・団体向けに「説明力養成講座」を実施している。フジテレビ「とくダネ!」レギュラーコメンテーター、フジテレビ「ネプリーグ」、NHKEテレ「ニッポンのジレンマ」「テストの花道」などメディア出演多数。
著書に『「自分の言葉」で人を動かす』(文響社)、『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)、『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)など多数があり、累計150万部。


超入門 資本論

お金と働き方の絶対ルールを知る者だけが勝つ! 今注目の気鋭の経済ジャーナリストが、この世を牛耳る資本主義のルールを解き明かしたマルクスの経済書を3つのポイントから読み解き、それでも勝ち残りたい人のための戦い方と残酷な世界の生き抜き方を解説する。誰もが教養として知っておくべき、最重要経済書の超入門書。

「超入門 資本論」

⇒バックナンバー一覧