経営のためのIT
【第18回】 2014年5月29日
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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

企業の営業革新に必要な
「セールス・ガバナンス」とはなにか?

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バックオフィス向けの情報投資が一段落した企業や、この取り組みと同時に顧客視点での業務改革に着目する企業の間で、ITを活用した営業革新に目が向けられている。収益を大きく左右する営業部門の情報化は、IT戦略の中でも重要であるが、目的と手段を取り違えることなく営業の強化を図るためには、「ガバナンス」という視点が不可欠である。

営業は企業組織の中で「聖域」なのか?

 企業を取り巻くビジネス環境や、顧客との関係がダイナミックに変化する時代と言われて久しい。さまざまな現象は、確かにビジネスルールが変わることを裏付けている。それは、昨日までパートナーだと思っていた企業が競合会社になったり、逆に昨日までの競合会社が今日のパートナーとなる可能性をもったものであり、同時にこれまで資産や強みと考えていたものが、一瞬にして負債や弱みに変わることを意味する。業種、規模の大小、対象とする市場の国際/国内を問わず、全ての企業がビジネスルールの変化という渦の中に巻き込まれていることは疑う余地がない。

 多くの企業が競争力の維持と拡大のために変化に強い企業体質を構築しようとしており、その施策としてさまざまな業務改革プロジェクトや情報化を推進している。そうした動きの中でも、昨今特に重要視されているのが、「売りの現場」に着目した営業革新というテーマである。

 これまで、企業にとって収益の入口としての役割を担ってきた営業部門は、社内の力関係や取引先との関係を含む商慣習などの理由から業務改革や情報化においては、ある種「聖域」として変革しがたい一面をもっていたといえる。しかし、ビジネスルールの変化に対応した強い企業体質を構築する上で、営業革新は不可避なテーマとなってきている。

営業部門に求められる変革

 聖域にメスを入れる以上、これまで企業にとって重要と考えられていた資産(既存顧客、既存チャネル、既存プロセス、商習慣など)が、新しいルールの下で本当に強みになりうるのか、あるいは本当に必要なのかという判断を下していく必要がある。もしかしたら、既存の資産を放棄することが明日の競争優位の源泉となるかも知れない。経営者は、営業部門の変革に際して、従来の資産を取捨選択することを念頭に置かなければならない。

 また、これまでも営業革新に対してさまざまな施策を実行してきた企業も多いであろう。営業担当者にモバイルデバイスを持ち歩かせたり、営業日報をグループウェアに書き込ませるといった情報化を進めてきたかもしれない。あるいは、営業成績に応じて報奨金を支給したり、スキル向上のために教育を施してきたかもしれない。

 一つひとつの施策は、それなりに効果を上げてきたかもしれないが、それらが明確な目的をもった統一的な考えで進められてきたか、もう一度確認してみる必要がある。

 営業革新は、業務改革だけでも情報化だけでも進めることはできず、両輪が噛み合ってこそ効果を発揮するものであることを認識する必要がある。ましてや、SFA(セールス・フォース・オートメーション)のソフトウェアやCRM(顧客関係管理)の仕組みを導入するだけで実現されるものではない。営業革新の実現には、経営目標に合致した「セールス・ガバナンス」の構築が不可欠となるのである。

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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