小田急線沿線、あるいは世田谷のイメージリーダー的な高級住宅地がこの街、成城である。その中でも駅の北側に位置する成城学園キャンパスから西に展開する整然と区画割された一帯は、広壮な邸宅のならぶ屋敷街。それでいて道を行き交う人々たちは若々しく、古びたムードはみられない。学園を中心にして発展する街の、理想の原型がここにある。

明るいムードの
高級住宅地

キャンパスを中心に発展した街「成城」
[銀杏並木] 成城を象徴する風景

 成城学園駅から北に向かうバスは、美しい銀杏並木を抜け、きわめて簡潔にスノビッシュな名前の停留所を通過していく。成城1番、2番、3番、4番停留所を中心とした町域のすべてが高級住宅街として知られ、事実そうである中でも、このバス停の名前がもつインパクトは圧倒的である。成城学園キャンパスを起点に西に広がるこの地区(4丁目から8丁目にかけて)は、学園開校当時に父兄が移り住んできた、最初の住宅地でもある。

 一帯には広々とした一戸建が多く、落ち着いた住宅地の典型である。といっても取りすました風はなく、ムードは明るい。広々とした大通り、そしてなにより、家々の生垣が風通しのよい成城の街をかたちづくっている。

地主の協力で
つくられた街

 世田谷区はもともと、少数の大地主によって地域が運営されてきた土地柄である。知られざる話だが、いまですら区内の名士たちが会合を開くと、その10人に満たないメンバーの土地の上だけを歩いて区を横断することすら可能であるという。