ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい
【第16回】 2014年6月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
河合江理子 [京都大学国際高等教育院教授],高橋俊介 [慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授]

特別対談
文系も、理系も、世界では「専門性」が武器になる
積極的に学ぶ姿勢で本物の基礎を身につけなさい
慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授・高橋俊介×京都大学大学院総合生存学館(思修館)教授・河合江理子

1
nextpage

ともに東京教育大学附属高校(現筑波大学附属高校)の出身であり、アメリカに留学し、マッキンゼーでキャリアを積み、現在は大学で教鞭を執るという多くの共通点を持つ慶應義塾大学特任教授・高橋俊介氏と京都大学教授・河合江理子氏。日本を知り、世界を知る二人から、日本の就職活動やキャリア教育に対する違和感、世界で通用する人材を育てるために必要なことなどが語られる。河合氏と高橋氏による対談は最終回。

わかりやすく教えると学生がバカになる?

河合 若い人たちのキャリア選択を充実させるために、私たち大学の先生は何ができるのでしょうか?

高橋 大学の講義改革を推進しようとしているNPO(非営利組織)があります。そこは大学のヒアリングをやっていて、講義の評価をするときに、たとえば「考えさせる講義」かどうかということを一つ挙げていました。これは、一方的に知識を与えるのではなくて、何らかの形で考えさせことをうまくやっている講義かどうか、という視点です。

 ほかにも、試験では持論を聞くかどうか、という視点もありました。つまり、自分なりの考えをまとめてアウトプットしなければいけない試験かどうかです。たとえば、東大の法学部をそうした基準で見ると、考えさせるような授業の運び方がまったくなく、一方的な講義になっている。でも、試験では「何々ついて述べよ」と持論を問われるんですよ。

河合 そこで考えさせているんですね。

高橋 そう。では、なぜ授業でそういうことをやらないかというと「東大だから」だそうです。やらせなければ自分で考えない奴はそもそも来ていない。なにもやらなくても、とにかく教えるだけ教えたら自分で考える人間が来ているから、大学の講義でそんなことをやる必要はないという考え方です。

河合 それでいいのでしょうか?中学や高校でもかまいませんが、どこかで学ばなければいけないことではありますよね。

高橋 そうそう。でも、たとえば大学の先生の中には、いまのような考えの人は結構いますよ。大学の講義を評価したとき、評価が高い先生には問題がある、と言われることがあります。なぜなら、わかりやすく教えているから。わかりやすく教えるからバカになると言う人もいます。

 わざとわかりにくく教えるから、「どうして?どういう意味なんだろう?」と一所懸命に考えるので、頭が鍛えられる。「なるほど。そうなんだ」とわかりやすく教えると人間はバカになる、と信じている先生も結構います。

河合 それはおもしろいですね。自分の教え方を正当化するために言っていると思えてしまう部分もありますけど(笑)。たとえば、イギリスでは自分で勉強をさせます。学び方を学んでもらうために、大学は教えてくれない。

高橋 そうそう。

河合 本だけ与えて、「自分で勉強してきて」と伝えられます。実際のゼミでは、先生にわからないところを質問して、先生はそれに答えるといった感じです。考える能力は鍛えられますね。

高橋 もともとのエリート教育とは、そういうものだと思います。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
自分の時間を取り戻そう

自分の時間を取り戻そう

ちきりん 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
生産性は、論理的思考と同じように、単なるスキルに止まらず価値観や判断軸ともなる重要なもの。しかし日本のホワイトカラー業務では無視され続け、それが意味のない長時間労働と日本経済低迷の一因となっています。そうした状況を打開するため、超人気ブロガーが生産性の重要性と上げ方を多数の事例とともに解説します。

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


河合江理子(かわい・えりこ) [京都大学国際高等教育院教授]

東京都生まれ。東京教育大学附属高等学校(現筑波大学附属高等学校)を卒業後、アメリカのハーバード大学で学位、フランスの欧州経営大学院(INSEAD)でMBA(経営学修士)を取得。その 後、マッキンゼーのパリオフィスで経営コンサルタント、イギリス・ロンドンの投資銀行S.G. Warburg(ウォーバーグ銀行)でファンド・マネジャー、フランスの証券リサーチ会社でエコノミストとして勤務したのち、ポーランドでは山一證券の合 弁会社で民営化事業に携わる。1998年より国際公務員としてスイスのBIS(国際決済銀行)、フランスのOECD(経済協力開発機構)で職員年金基金の運用を担当。OECD在籍時に はIMF(国際通貨基金)のテクニカルアドバイザーとして、フィジー共和国やソロモン諸島の中央銀行の外貨準備運用に対して助言を与えた。その後、スイス で起業し、2012年4月より現職。著書に『自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい』(ダイヤモンド社)がある。

高橋俊介(たかはし・しゅんすけ) [慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授]

1954年東京都生まれ。東京大学工学部航空工学科を卒業し日本国有鉄道に入社。84年プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京事務所に入社。89年ワイアットカンパニーの日本法人ワイアット(現タワーズワトソン)に入社。93年同社代表取締役社長に就任。同職を退任後、個人事務所ピープル ファクター コンサルティングを通じて、コンサルティング活動や講演活動、企業の人材育成支援などを行う。2000年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授に就任。同大学SFC研究所キャリア・リソース・ラボラトリー上席所員(訪問)を経て、11年11月より現職。

『組織マネジメントのプロフェッショナル』(ダイヤモンド社)、『人材マネジメント革命』(プレジデント社)、『21世紀のキャリア論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。


自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい

ハーバード大学、INSEAD(欧州経営大学院)、マッキンゼー、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)…そして、京都大学教授。『自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい』の刊行を記念して、書籍では語り尽くせなかったエピソードを中心に、日本・アメリカ・ヨーロッパの本物の世界を知る日本人が、国境を越えて生きるための武器と心得を語る。

「自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい」

⇒バックナンバー一覧